相続や事業承継対策で活用できる配当還元方式とは?

配当還元方式

株式の相続や、事業を承継する場合に問題になるのが、「株式の価額をどうやって計算するのか」ということです。取引相場のない株式(例としては「自分の会社の株)は基準になる金額がはっきりしていないため、計算方法を定めておかなくてはならないのです。
株式の評価方式は、その会社や株主の状況によって「純資産価額方式」「類似業種比準方式」「配当還元方式」という3種類を使い分けることになっています。

ここでは、例外的な方法である「配当還元方式」について解説します。

配当還元方式は特殊な方法

概念 アイデア

本来、株式というのは会社の財産価値全体を細かく切り分けたものですから財産を総体的に見なくては評価できないと考えられます。

ですが、配当還元方式では「株主が受ける配当金」という点にだけ着目して評価額が算出されます。

この計算方法では他の2つの方法よりも株式の価額が安くなることが一般的です。
ただ、特例的な評価方式であるとされているため、適用できる場面が限られているのです。

配当還元方式の具体的な計算

配当還元価格の計算は次の数式で行います。

配当還元価格=(1株あたりの過去2年間の平均配当金額/10%)×(1株あたりの資本金等の額/50円)

ここで言う、「1株あたりの」というのは株式数=「資本金額÷50円」とみなしています。

資本金の金額が同じくらいであっても、発行している株式数が異なることもあります。そのため、実際の株式の数で1株あたりの数値を出してしまうと、あまりにも計算結果がバラバラになることが考えられるので、上記のように一律に計算するのです。

ただ、この計算方法だと利益がなかったり配当がなかったりする会社では結果がゼロやマイナスになってしまいますので、1株2.5円という下限の価額が定められています。

配当還元方式は経営者の相続や事業承継に利用できる

経営権のない株主の株式を安く見積もることができるという特性を利用して、
「従業員持株会に自社の株式を譲渡する」方法で節税などに使うことができます。

経営者側は、株式を譲渡することで自分の持ち株を減らして相続税を節税することにつながりますし、従業員側は財産を形成することができますから双方にとってメリットがある方法といえます。

配当還元方式が使われるのはどんな場合か

配当還元方式は、主に「配当金をもらうことだけが目的で株式を持っている株主」の株式の価額を計算する場合に使われます。

同じ会社の株主でもその立場はさまざまで、株式を持ちながら経営にも深く関与する人もいれば、ほぼ経営にノータッチの人もいます。

後者についてはまさに自分の株式の価値は配当金だけなのであって、それ以外の要素を入れないで計算する方が現実に合致する金額が出てくるわけです。 

相続や事業承継をする際には、財産価値のあるものについてはその評価額を算出しなければなりません。

株式について問題になるのは「どうやって評価額を算出するのか?」ということです。

現金や預貯金のように金額がわかりやすいものに比べて、不動産や株式は評価の仕方が1つではないのが難しいところです。

特に取引相場のない株式については、会社の規模が上場企業に引けを取らないものから個人事業に近いものまでまちまちですので一律に定めることができません。
そこで、株式の評価方法を状況により使い分けるため、「純資産価額方式」「類似業種比準方式」「配当還元方式」という3種類が定められています。

具体的にこれらをどう使い分けるかについては若干、複雑なルールがあるのです。

「原則的評価方式」とは?

「純資産価額方式」「類似業種比準方式」の2つは「原則的評価方式」と呼ばれています。

純資産価額方式とは?

まず、「純資産価額方式」とは、会社の「純資産価額」を株式の数で割って算出したものです。会社の財産に回収した売掛金をプラスし、そこから負債分や買掛金を払ったとします。残っている財産を売り払った後、すべての株主で分けたらどのくらいになるか、というイメージです。つまり、今、会社が仮に解散したらどのくらい分配してもらえるかということなのです。

類似業種比準方式とは?

「類似業種比準方式」とは、評価する会社と似通った業種の会社につき、平均株価、1株当たりの配当金額、年利益金額、純資産価額を比べて計算する方法です。この方式は、純資産額方式では評価額が高くなりすぎる(=相続税が高くなる)株式について、なるべく価格を安く抑えるために行われる方法と考えておけばよいでしょう。

「特例的評価方式」とは?

「特例的評価方式」とされているのが「配当還元方式」です。
株式とは会社の財産全体を細かく分けたものといえるため、普通、株式の評価というのは会社の財産全体を見て決められるべきものです。しかし、配当還元方式は「株主が会社の利益の中から受ける配当金」のみに着目して決められるものです。

配当還元価格の計算は次の数式で行います。
配当還元価格=(1株あたりの過去2年間の平均配当金額/10%)×(1株あたりの資本金等の額/50円)
ここで言う、「1株あたりの」というのは株式数=「資本金額÷50円」とみなしています。

会社によって資本金の金額は似通っていても、発行している株式数がばらばらであるため、実際の株式数を使って上記の計算をすると資本金や配当金から見て同じレベルの会社の計算結果が全く異なるものになってしまうため、一律に「みなし」の数値を使うということなのです。

この方式を使うと、株式の評価額は上記の2つの方法よりも低くなります。そういった意味で「特例的」と表現されるのですが、財産価値の一部しか見ないで行う、いわば特殊な評価方法であるため、これが使われる場面が限定されているのです。

「配当還元方式」を使うべき株式とは?

影響力 矢印

配当還元方式は「評価を低く見積もることのできる計算方式」であるわけですが、無条件にこれを適用することを認めるわけにはいきません。配当還元方式を使うことができるのは、「少数株主」と呼ばれる株主が持つ株式ということになっています。

ここで言うところの「少数株主」とは、単に保有する株式の数が少ないというだけではなく、会社の経営に対する影響力が非常に少ないという意味もあります。

つまり、配当金をもらうことだけが目的で株式を持っているような株主と考えればよいでしょう。

株主の持つ価値というのは、必ずしもすべてが均等ではありません。

もちろん、持っている株式の数が多ければ会社の意思決定により深く関与できることになりますが、それ以外にも代表取締役、取締役といった会社の役員を兼ねていることで会社に与える影響力が強くなるということも考えられます。

そういった実質的に会社を動かす権力のある人が持つ株式とそうでない人の株式をまったく同じ方法で評価することは公平ではなくなってしまうため、純粋に配当目的だけの株主については安く見積もれる「配当還元方式」が認められているのです。

一人が株式の過半数を持っているようなケースだけではなく、数人で過半数を持っており、それらの人達が密接な間柄(配偶者、親子など)であれば、実質的にはそのグループが会社の経営をほぼ牛耳っていることになるでしょう。

では、使えるケースをさらに詳しく見ていきましょう。

株式の50%を超える株式数を持つ同族関係者グループが存在する場合

同族関係者で株式の50%を超える数を持っている場合、その株主たちは「同族株主」と呼ばれます。このような状態になっている会社では、同族株主以外の人が持つ株式ではほぼ経営に関与することは不可能といえます。
「株主総会の特別決議」と呼ばれる、2/3以上の多数決が要求される場合はその決議を阻止することができる可能性もありますが、特別決議が必要になるのは会社法の中でもとりわけ限られた場面(会社の定款変更など)です。

経営に関わるおおよその事柄は普通決議(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を定足数として、出席株主の議決権の過半数によって可決される)によって決められることになっているため、過半数を持たれてしまえば他の株主はほぼ口を出す余地がないわけです。

ですから、配当金にしか関心が持てない残りの株主についてはこの時点で無条件に「配当還元方式」を使っての評価ができることになります。

また、同族株主に属する人であっても、以下の条件を満たしている場合は「配当還元方式」が使えることになっています。

  1. 自分の議決権が5%未満である
  2. 「中心的な同族株主(本人と配偶者等の親族で25%以上の議決権を持っている株主)」がいる
    ※親族の範囲は、課税時期において同族株主の1人並びにその株主の配偶者、直系血族(親、祖父母、曽祖父母、子、孫、ひ孫)、兄弟姉妹及び1親等の姻族
  3. その人自身が「中心的な同族株主」でも「役員」でもない
    ※役員とは社長、理事長、副社長、代表取締役、専務取締役、専務理事、常務取締役、常務理事その他これらの者に準ずる役員並びに監査役及び監事のことであり、平の取締役は含まれない

実際に判断する際は、同族株主という条件にあてはまる人が、1から3までの条件を順次見ていって、すべてにあてはまれば配当還元方式を使えるという結論になると考えればよいのです。

つまり、同族株主であっても実質、このような状況なら経営にほとんど関われない立場とみなされているわけです。

株式の30%から50%を持つ同族関係者グループが存在する場合

もし、50%を超える同族関係者グループがいないとしても、30%以上を持っていればその人の影響力は少なくありません。たとえば40%、45%といった割合を占める株式数を持つ株主は、他の1人、2人の株主を自分の味方につけるだけで絶大な影響力を振るうことのできる可能性を持っているからです。この場合、30%から50%の同族関係者グループに属する人も上のケースとは少し意味は異なるものの「同族株主」と呼ばれます。

この場合、「同族株主」でない株主は無条件に「配当還元方式」を使えます。

そして、同族株主に属する株主でも、上記1から3の条件にあてはまる人であればやはり使えることになっています。

株式の30%を持つ同族関係者グループがいない場合

株式の30%未満を持っている株主しかいないのであれば、それほど大きい支配権を持っている人はいないように見えます。しかし、この場合でも15%以上を持っている株主がいる場合は影響力が大きいとみなされています。
なぜなら、会社の経営については、何%以上を持つ株主の影響力が絶対的に大きい、という考え方なのではなく、他の人に対して大きいか小さいかという相対的なもので決まるという発想だからです。もし、他のグループが30%以上を持っていないということであれば15%程度の人であっても十分、経営に大きな影響を与えることが可能です。

この場合、「議決権割合が15%以上のグループ」ではない株主は無条件に「配当還元方式」を使えます。そして、同族株主に属する株主でも、上記1から3の条件にあてはまる人であればやはり使えることになっています。

経営者が配当還元方式を使って相続や事業承継対策をするには?

チームワーク

今まで見てきたことを考えると、大株主や経営者は「純資産価額方式」「類似業種比準方式」しか使えないため、ある程度高い税金を払うことを甘受しなければならないようにも見えます。しかし、工夫次第では配当還元方式を使って節税することが可能になるのです。

具体的には、まず1つ目として、
「従業員持株会に自社の株式を譲渡する」
という方法があります。

従業員持株会というのは、常設の機関として会社の従業員で作られる組織です。従業員はここに所属していれば自社株式の一部を買い受けて保有することができます。

この方法のメリットは、

  • 入会した従業員の会社への帰属意識、経営への参加意識を高めることができる
  • 株式の保有を通じて、従業員の財産を形成することもできる
  • 経営者等、株式を譲渡した側は財産を減少させることで相続税を軽減することができる

ということでしょう。

そして、上記で解説したように、「同族株主以外の株主」「同族株主のうちで少数株式所有者が取得した株式」については、配当還元価額によって評価をすることができるので、従業員側も課税されずに済むのです。

経営者側としては、従業員に対して持株会の存在を福利厚生の大きなポイントとしてアピールし、勤労意欲をアップさせるために使うことも多いといえます。そして、「持株会に入って株式を持っていた従業員が退社する際は保有していた株式を売り渡す」という強制売り渡し条項をつけておけば、むやみに会社と関係のない人間に株式が流出するのを食い止めることもできます。

しかし一方でデメリットといえる面もあります。
あまりにも多く株式を譲渡してしまうと経営者サイドの実権を揺るがしかねない事態にもなるため、譲渡する数については慎重に検討することが求められます。
また、従業員持株会という形で従業員の保有する株式を一括して管理することができる反面、以前から株式を持っていた従業員を持株会に取り込めなかった場合は管理に問題が出てくることもあります。

従業員持株会というのは、民法で考えた場合に「組合」という組織になります。組合であれば従業員持株会の理事長が株式の名義人ということになりますが、組合が持っている個々の財産の所有者、収益の帰属先は従業員持株会に所属する個人個人のものになるのです。
ですから、もしも経営者から従業員持株会の構成員に株式が譲渡されると個人から個人への贈与税が課税される危険があるのではないかという心配も出てきます。しかし、配当還元価額を使って譲渡することができれば従業員持株会の会員に贈与税の課税関係が生じることはありません。

そして、2つめとして、
「同族ではない役員が後継者となる場合、役員持株会を作って株式を譲渡する」
という方法があります。

会社の後継者を決める場合、必ずしも承継する人が先代の親族とは限りません。親族以外の従業員を役員にしたいというケース、つまりその役員が大株主や経営者、その親族ではないときは「役員持株会」という形をとって株式を持たせることもあります。

おおよそ、従業員持株会と同じようなメリット、デメリットがあると考えればよいでしょう。

まとめ

市場で取引されることのない株式については一般的に評価方法が困難です。そのため、何らかの評価方法を定めておかなければなりません。
配当還元方式というのは、原則的な評価方法と比べて特殊な方法であり、他の方法よりも株式の価格は低く見積もられます。

株主としての権利、価値をすべて一律に考えることはできず、発行済株式全体のうちどのくらいの保有割合であるか、そしてその人は会社内でどのような立場にあるかにより株式の価値は変わってくるといえます。
ですから、会社の経営に影響を及ぼすことができない株主の持つ株式を安く評価するための方法として配当還元方式が使われるのです。
また、経営陣がその保有する株式を従業員持株会などに譲渡することで節税等に利用することもできます。

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