遺言の不動産表記が誤っていて登記できない。こんなときどうなる?

遺言の不動産表記が誤っていて登記できない。こんなときどうなる?

遺言に記載された不動産表記が誤っていると登記できないということがあるのですが、このようなときはどうなるのでしょうか?

解説していきます。

遺言の不動産表記が誤っていて登記できない。こんなときどうなる?

質問 父が遺言で土地を遺してくれましたが、表記が不動産表記の誤りの為登記できないと言われました。

回答

遺言書の記載を見ないと分からないためケースバイケースではありますが、遺言の表記で不動産が特定できない場合は、名義変更登記(相続登記)ができない場合があります。

本来であれば、遺言書の作成過程において、事前に情報に誤りがないことを明確にチェックすることが必要です。

ただし、不正確な遺言内容でも登記が可能になるケースもありますので、詳細については弁護士事務所や司法書士事務所などの窓口に相談してみてください。

そもそも、被相続人が自ら執筆した遺言書(自筆証書遺言)は、法律に基づいた正しいルールで書かれなければ効力を発揮することができません。

民法968条には以下のように書かれています。 

第九百六十八条  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2  自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

参照元 民法

 つまり、自筆証書遺言はパソコンやワープロで作成することはできず、全文・正確な日付・正確な氏名を自筆し、印鑑を押される必要があります。また、書き間違いや不足点などを加筆修正する場合も、上記にあるような形式に則って行われる必要があります。

 このように、自筆証書遺言の執筆形式が正しいことを確認してはじめて内容の精査に入るわけですが、肝心の相続財産に関する表示内容が不正確だと、形式が正しくても問題が発生することがあります。

回答の解説①:土地は所在と地番、建物は所在と家屋番号で特定する

 もし遺言書において言及された不動産の情報が不足していて特定が難しい場合、法務局で受付されず名義変更登記を行うことができません。

例えば、「世田谷にあるマンションは長男の○山×朗に相続させる」だけでは、対象の不動産を特定できず不動産の名義変更登記ができない場合があります。

 もちろん、世田谷に被相続人名義の不動産は一つしかないということであれば、この情報でも被相続人の名寄帳など補足情報によって不動産を特定し、場合によっては登記可能になることもあります。

しかし、不要なトラブルの種を作り出すきっかけになってしまいがちです。特に不動産については、土地の所在と地番、建物は所在と家屋番号のように、対象を正確に特定するような情報を盛り込む必要があります。

遺言書の内容に問題があったとしても、当然被相続人はなくなっているわけですから、今さら書き直したり修正したりすることはできません。

こうした場合、名義変更登記を行うには他の相続人全員の同意書を得ることになります。相続人全員の同意書が得られない場合、不動産の所有権を確認するために、他の相続人を相手取って訴訟を起こさなければならなくなります。

遺言書とは複数の相続人同士のトラブルを防ぐために作成されるものなのに、少し記載の仕方が不正確であるだけでむしろトラブルの種になってしまうわけです。

自筆証書遺言に記載された相続財産となる不動産の書き方によってトラブルを起こさないためには、2つの対策があります。

第一に、登記事項証明書の通りに不動産の所在情報を文面に記載することです。自分で遺言書を作成する際は、面倒でも相続対象となる不動産の登記簿謄本を取り寄せ、一言一句間違いがないよう性格に所在情報を記載するようにしましょう。これによって、相続対象の財産が分からないという問題はクリアできる可能性が高くなります。

第二に、執筆した自筆証書遺言を第三者の専門家にチェックしてもらうことです。相続財産の情報や分割方法についての情報が不正確であることによる相続トラブルは、弁護士のような専門家のチェックを経ることで必ず指摘してもらえます。

これらの対策によって正確な不動産情報を自筆証書遺言に盛り込み、不要なトラブルを防ぐことができます。

回答の解説②:第三者のチェックを受けると誤りが防げる

また、遺言書を自分で作成するのではなく、公証役場で作成する(「公正証書遺言」)のも有効な手段です。

この場合、被相続人ではなく公証人(裁判官や検察官等の経験者)が被相続人から遺言の内容を聞き取り、遺言書を作成します。こうすれば、不動産の情報など遺言内容の不備によって無効になったりトラブルになったりすることはありませんし、偽造のリスクもありません。原本は原則として20年間保存されます(公証人法施行規則27条1項)ので、紛失の恐れもありません。

自筆証書遺言ですと、被相続人の死亡後に間違いなく本人が執筆したものであることを家庭裁判所に「検認」してもらう必要があります。しかし、公正証書遺言ですとはじめから偽造の恐れがないということで、検認手続きはありません。遺言内容を正確かつ明快に実現させるうえでも、公正証書遺言を作成してもらうのがおすすめです。

ただし、今回のケースではすでにお父様が不正確な自筆証書遺言を残して亡くなられているため、この遺言書を基に何とか登記ができないか、手段を探ることになります。場合によっては、前述の通り他の相続人と公的な場で協議する必要も出てきます。対応方法は不動産の表記の誤りの度合いや他の相続不動産の状況によって個別に異なるため、弁護士事務所や司法書士事務所など、相続について相談できる窓口までご相談ください。