遺留分と寄与分、優先されるのはどっちか?

遺留分と寄与分、優先されるのはどっちか?

遺留分減殺請求に対して、寄与分が主張できるか?という争いがまれに発生します。

そもそも、遺留分と寄与分は、どちらが優先されるのでしょうか?

遺留分と寄与分、優先されるのはどっちか?

1.遺留分減殺請求に対して、寄与分を主張できるか

遺言によって遺留分を侵害されている相続人が、遺留分減殺請求権を行使してきた際に、行使された側の相続人が、寄与分、すなわち、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした部分(寄与分)があるので、遺留分の算定の基礎となる遺産から寄与分を控除して欲しい、と主張することはできるでしょうか。

 この点、裁判例において、東京高裁平成3年7月30日判決は、遺留分減殺請求訴訟の場において、寄与分があることを抗弁として主張することはできないと判示しています(同事件は、上告棄却されており(最高裁平成8年1月26日判決)、高裁の判断が最高裁でも維持されています。

 寄与分は、民法上、まずは当事者の協議により、協議が整わない場合は、家庭裁判所が算定することになっています。

ですから、当事者間で寄与分についての協議が整わないときは、遺留分減殺請求に対する反論という形ではなく、別途家庭裁判所に寄与分を定める申し立てを行う必要があることになります。

2.家庭裁判所が寄与分を定める際に遺留分が考慮されるか

では、家庭裁判所が寄与分を定める申し立てを受けた場合、遺留分を有する相続人の遺留分を侵害するような寄与分を定めることはできるのでしょうか。

 民法上、寄与分は、「一切の事情を考慮」(民法904条の2)して定められることとなっており、特に上限額が定められていないことから、遺留分を侵害するような寄与分を家庭裁判所が認めることも、法律上は可能であるようにも思えます。

 ただ、この点について、東京高裁平成3年12月24日判決は、「寄与分の制度は、相続人間の衡平を図るために設けられた制度であるから、遺留分によって当然に制限されるものではない。」と判示しつつ、「寄与分については法文の上で上限の定めがないが、だからといって、これを定めるにあたって他の相続人の遺留分を考慮しなくてよいということにはならない。むしろ、先に述べたような理由から、寄与分を定めるにあたっては、これが他の相続人の遺留分を侵害する結果となるかどうかについても考慮しなければならないというべきである。」と判示しました。

 つまり、裁判所としては、寄与分を定める際に、「他の相続人の遺留分を考慮しなければならない」=原則として、他の相続人の遺留分を侵害するような寄与分は認められない。と考えているものといえます。

 ただ、他の相続人の遺留分を侵害するような寄与分を定めることが一切許されないとは判示していません。

 この東京高裁の事案においても、

「ただ家業である農業を続け、これら遺産たる農地等の維持管理に努めたり、父の療養護にあたったりというだけでは、そのように当該相続人の寄与分を大きく評価するのは相当でなく、さらに特別の寄与をした等特段の事情がなければならない。」

と判示しており、通常の寄与(特別の寄与)を超えるような「さらに特別の寄与をした等の特段の事情」があるときには、他の相続人の遺留分を侵害するような寄与分を定める余地があることを認めているといえるでしょう。

まとめ

以上のとおり,民法及び裁判所の考え方に従うと,家庭裁判所において寄与分を定めるにあたって,他の相続人の遺留分を侵害するような寄与分を定めることも許されないわけではないことになり,その意味では寄与分が遺留分に優先するともいえます。

ただ,そもそも寄与分は「特別の寄与」をしたときだけに認められるもので,単に被相続人の介護をする等一般的に扶養義務者として求められる程度の寄与では,寄与分は認められません。

ですから,通常の寄与分を超えるような「さらに特別の寄与」が認められるのはかなり特別の事情があるようなレアケースといえます。その意味においては,寄与分は遺留分に優先するものの,実際には,他の相続人の遺留分を侵害することのないように寄与分が定められることが大半である,といえるでしょう。



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