相続放棄で必要な戸籍謄本の取り寄せ方法とは?|相続放棄の方法を解説

更新日:2023.12.06

相続放棄で必要な戸籍謄本の取り寄せ方法とは?|相続放棄の方法を解説

故人に借金がある場合や遺産相続争いに巻き込まれたくない場合など、様々な理由で相続放棄をする人がいます。

相続放棄をするには、家庭裁判所で相続放棄の手続きをするのですが、その中でやっかいなのは故人(=被相続人)の住民票または戸籍も必要なことです。

今回の記事では、できるだけ簡単に相続放棄のための戸籍を取り寄せる方法を伝授します。

1. 相続放棄に必要な書類一覧

相続放棄をするには、被相続人(お父さんなど)が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所で手続き(=申立)する必要があります。

例えば、お父さん千葉で亡くなって娘のあなたが相続人である場合、相続放棄をする手続きする場所は千葉家庭裁判所で手続きします。

相続放棄の申立で必要な書類をご説明します。

1-1 相続放棄する人全員が必要な書類とは

  • (1)相続放棄の申述書
  • (2)標準的な申立添付書類

大まかに考えると、相続放棄の申請書類は上の図のように、「申述書」とその他の「添付書類」という2つの構成となっています。

では、1つずつ解説します。

(1)の申述書では、申立人の名前を書きますが、書類の中では「申述人」という名称になっています。

まずはこれがなければ始まりません。上記で挙げた①の申述書については、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

申述人の住所や電話番号、そして亡くなった被相続人とどのような関係なのかを記入します。

また、何故相続放棄をしたいのかと理由を当てはまるものに〇をするという形で記入します。

(2)について、「標準的な申立添付書類」とありますが、これだけだと意味が分からないですよね。

この言葉は、家庭裁判所のオームページに書いてある通りですが、要するに「必要な添付書類があるよ」ということです。

何故「標準的な」という言葉を使っているのかはわかりませんが、添付書類は最後の項目でお伝えする通り、申立人の立場により種類が異なります。

次に添付書類について触れていきます。

1-2 共通書類

 

申立人が被相続人(亡くなった方)の妻なのか娘なのかといった関係性により、相続放棄の申立に必要な書類は異なります。

しかし、どの場合でも必要な共通添付書類をますご説明します。

具体的には、以下の通りです。

【添付書類】

<共通>

  • (3)被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • (4)申述人(放棄する方)の戸籍謄本

1-3 マイナンバーカードがあれば戸籍謄本取り寄せもカンタン

申述人の戸籍謄本については、問題ないですよね。マイナンバーカードがあれば、戸籍謄本をコンビニで取り寄せる事が可能です。

ちなみに、現在お住いの住所と本籍地が異なる人はたくさんいらっしゃいますよね。その場合は、本籍地の市区町村へ利用登録を行う必要があります。

しかし、ご安心ください。利用登録はICカードリーダのついたパソコンからインターネット経由で申し込むことも可能です。

「家にあるPCにはカードリーダついていない!」という方も多いと思います。そんな時は、コンビニにあるキオスク端末を使いましょう。

コンビニの店舗によっては、この申請ができない所もあるので、上記リンクの「利用できる店舗情報」からキオスク端末のある店舗を探しましょう。

1-4 被相続人の住民票除票または戸籍附票とは

住民票や戸籍謄本という言葉はよく聞きますが、住民票除票と戸籍附票とは一体何でしょうか? 住民票除票とは、ある人が亡くなったことにより住民票から元所在地が抹消され住民登録が抹消されたことを記録した書類です。

戸籍附票とは、こせきふひょうと読みます。これは、住所の移転記録が記録されている書類です。

これを提出することにより、被相続人が確かに〇〇という場所で亡くなったということを証明することができます。

1-5 住民票除票と戸籍附票はどうやって取り寄せる?

戸籍の附票は、コンビニで取得可能です。しかし、住民票除票については残念ながらコンビニで取得できません。

住民票除票は、住民票を取得する場所と同じ市区町村の役所で取得します。 これは、誰でもできるわけではありません。

配偶者・直径血族(祖父母・父母・子・孫)のみが請求できます。請求する場合、あなたの身分を証明する必要もでてくるでしょう。

例えば、お父さんが千葉県船橋市で亡くなった場合は、千葉県船橋市の役所で取得します。現在あなたがお住いの場所から、該当の役所が遠い場合は郵送で請求することもできます。

その場合は、まず該当の役所のホームページや電話で必要書類や手続きを問い合わせるのが一番です。

標準的には、請求者の身分証明書の写し、事務手数料(郵便少額小為替)、返信用封筒(返信先住所と切手の貼付済)、そして住民票関係請求書が必要です。

1-6 住民票除票と戸籍附票の保管期間は5年間

住民票除票と戸籍附票はいずれも、住所や戸籍が抹消されてから5年間が保管期間です。5年経つと、記録から抹消されます。

※住民基本台帳施行令の一部改正(令和元年6月20日施行)により、住民票の除票、戸籍の附表の保存期間が150年間に延長されました。

ただし、すでに保管期間を経過してしまっているもの(平成26年6月20日以前に消除又は改製したもの)については、発行することができません。

イメージとしては、PCで削除されたファイルが5年間は別フォルダに移動されますが、5年経つとPC自体からファイルデータが消されています、というようなイメージです。

亡くなった方のデータが消えるって、なんだか悲しいですね。

しかし、亡くなった方については、ご家族や親戚や仲間で写真や思い出を通して末永く覚えておきましょう。

1-7 申述人が,被相続人の配偶者の場合

 

申述する人が被相続人からみて夫や妻といった配偶者である場合は、以下の書類が必要です。

  • ・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

この書類は、被相続人の出生から死亡するまでの全ての戸籍を含む書類です。

例えば、離婚を繰り返した配偶者(妻)の場合、最初は山田だったが次に佐藤になり、最後の結婚では伊藤になった。こんな経緯が書かれているのがこの書類です。

日本には、「戸籍法」という法律が存在し、戸籍法が改正される時に過去の履歴が書き換えられてしまう場合があります。この書類では、書き換え前の戸籍を区別して改製原戸籍、と呼んでいます。

1-8 申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合

  • ・ 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • ・ 申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

1点目については、②申述人が,被相続人の配偶者の場合と同様です。

代襲相続人とは、相続においてお父さんまたはお母さんが亡くなり、その子供も何らかの理由で相続をしないため、相続権が孫またはひ孫に移る、といった背景があり相続人になる人です。

おじいちゃんが亡くなり、その子供も相続をせず、孫である自分に相続権が来たが相続放棄をしたい。

このような場合は、おじいちゃんではなく、その子供の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本を取り寄せる必要があります。

なお、先順位相続人等から提出済みのものは添付不要です。相続人の前順位である子供が相続放棄で既に共通書類などを提出している場合は、孫である自分は申述書と自分の戸籍謄本だけ提出します。

1-9 申述人が,被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合

  • ・ 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • ・ 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • ・ 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

直系尊属とは、父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族のことです。

また、養父母も含まれます。 叔父・叔母、配偶者の父母・祖父母は含まれません。

自分の親や祖父・祖母が亡くなっている場合は、その死亡の記載がある戸籍も提出する必要があります。

どういうことかというと、例えば自分の夫が亡くなり夫に借金があったため、相続放棄したいとしましょう。

そして、あなたの親も既に亡くなっていたとします。この場合は、夫の戸籍が除籍されたと証明する書類のみではなく、あなたの亡くなった親の分の戸籍も提出する必要があります。

1-10 申述人が,被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合

  • ・ 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • ・ 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • ・ 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • ・ 申述人が代襲相続人(おい,めい)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

2. 相続放棄に必要な郵便切手など

相続放棄に必要な戸籍関係の書類について触れましたが、相続放棄の申述には合わせて以下のものも必要です。忘れずに用意しましょう。

  • ・収入印紙 800円分(申述人1人につき)
  • ・郵便切手(必要金額は各家庭裁判所ごとに異なります)

例)東京家庭裁判所の場合:84円x4枚、10円x4枚

3. まとめ

相続放棄では、相続人の立場により様々な種類の戸籍を取り寄せる必要があります。

しかし、今はマイナンバーの普及により主なものはコンビニで取り寄せる事ができます。コンビニで取り寄せできない場合は、余分に切手代がかかりますが郵送で取り寄せましょう。

戸籍の取り寄せには、問い合わせや必要な書類記入などを含め最短でも2~3日はかかります。

相続放棄の期限である3か月前ギリギリではなく、余裕をもって申述しましょう。

 

この記事の監修者

代表社員 市山 智

所属事務所:司法書士法人・行政書士 オールシップ

保有資格:司法書士・行政書士

早稲田大学法学部 卒業

千葉司法書士会会員、千葉県行政書士会会員

公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員

一般社団法人日本財産管理協会会員

司法書士法人・行政書士 オールシップの詳細ページはこちら>>>

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