相続税の税務調査の基礎知識と対応方法の全手順【質問例付き】

更新日:2023.11.28

相続税の税務調査の基礎知識と対応方法の全手順【質問例付き】
 
相続税は、かなり高い確率で税務調査があることをご存知でしょうか?また、相続税の税務調査は、7月下旬から11月頃が最も多いと言われております。
相続税の申告をしなければならない方は、相続が発生する前に税務調査がどんなものなのかをしっかり理解しておく必要があるでしょう。
すでに税務調査が入る寸前の方も、税務調査ではどのような質問がされるのかを確認しておくべきでしょう。
今回の記事では、相続税の税務調査の基礎知識をご説明させて頂きます。

1.税務署の個人資産の把握方法とは?

税務調査

人が亡くなった場合、7日以内に『死亡届』を市区町村役場(市役所等)に提出しなければなりません。

死亡届を受け取った市役所等は税務署に通知します。

税務署はこのタイミングで、いつ、誰が亡くなったのかを把握します。

さらに、市役所等から固定資産税評価額の情報(誰がどれくらい不動産を保有しているかの情報)も税務署に通知するため、相続税が発生しそうな方(不動産をたくさん保有している方など)をこの段階で特定できます。

平成13年以降、KSKシステム(全国の税務署をネットワークで結び、納税者情報を一元管理するシステム)を導入し、その結果、相続税の申告が必要かどうかをおおむね把握できるようです。

さらに、このシステムが税務調査を行う必要があるかどうかの参考資料となります。

2.相続税の税務調査の基本

相続税は、法人税や所得税と同様に調査が実施されますが、他の税の中で一番調査のリスクが高いのが相続税です。
その理由は、簡単で「高額だから」であるためです。税務調査の目的は、申告漏れを発見することにあります。
申告漏れを調査するために一番チェックされるのが金融資産のように隠しやすいものです。
以前は、割引債や、郵便貯金は見つかりにくいと言われていた時もあったようですが、実際は発見されることが多いので、隠しておかないほうが賢明でしょう。
※割引債とは、額面より低い価格で発行される、利息がゼロの債券のことです。

3.調査で指摘されやすい3つの金融資産とは何か?

税務調査

(1)被相続人(相続財産を残して亡くなった方)本人の預貯金

死亡直前から3年~5年分、1回につきおおむね50万円以上の金額が引き出されている場合には、その使途を質問されることがあります。
なぜこんなことを質問するかというと、お金を引き出して隠し預金に入金しているのではないか、あるいは、本人以外の名義預金になっていないか、などを確認するためです。
また、もし高額な不動産を売却している場合には金額が多額であることから、約20年前までさかのぼり、売却代金の行方を調査されることもあります。
よって、相続税が発生しそうだと感じている場合には、お金の使途は明確にしておく必要があります。

《よくある質問①:税務署は銀行の残高を確認できるのか?》

税務署は、銀行や、証券会社に問い合わせて残高確認や入出金を確認することができます。

名義預金がある可能性もありますので、被相続人の口座だけでなく、親族の口座データも確認しています。

金融機関以外にお金を隠す人も多いと思いますが、過去の入出金すべてを税務署に見られるため、不審な入出金があれば指摘され、隠したお金もバレる可能性が高いでしょう。

日本にお金がなければバレないだろうと思い海外に現金を送金する方もいらっしゃるようですが、100万円以上の海外送金は銀行から税務署へ資料が提出されることとなっているため、海外に送金すれば問題ないと考えるのは間違いでしょう。

(2)被相続人本人の生命保険

保険でチェックされるものは、契約が本人名義ではなく、妻や子供たちが契約者で、保険料を負担しているのが被相続人である保険です。

その理由は、保険料を負担している人が実態として契約者であるため、被相続人の死亡をきっかけとして取得する生命保険金が、相続税の課税対象となるためです。

(3)名義預金(家族名義の預金)

名義預金とは、預金の名義となっている人と実質的にその預貯金の所有者が異なる預金のことを指します。
例えば、子供名義で父が預金をし、父が自由に入出金できたとします。
この口座は、子供名義ではありますが、実態としては、父名義の預金なので、父が死亡した場合には、子供名義の預金も父の相続財産として課税されます。
単に家族の名義を借りた預金は被相続人の相続財産とされてしまい、相続財産に含めて相続税の申告を行わなければならないのです。

4.税務調査の時期とは?

砂時計

税務調査の時期はおおむね6ヶ月後~2年後に行われます。7月から10月頃が、税務調査のピークと一般的には言われております。
もちろんそれ以外の時期も、行われる確率はゼロではありませんが、他の月はリスクが低いでしょう。
法人や個人の確定申告が集中する2月~6月までは税務署が一番忙しい時期となりますので、その時期の調査はあまりないと言えるでしょう。
そして税務署は、上記のように確定申告の処理を行う為、6月末に「年度替わり」となります。
よって6月末に人事異動などが行われ、7月からが税務署の新年度と言われております。
年度替わりはゴタゴタが生じるため7月初旬はリスクは低いと言われております。
もちろん上記の文章に記載されていない1月も、入りやすいとは聞きますが、秋に比べれば少ないと言われております。

5.相続税の税務調査は何日行われるのか?

相続税の税務調査は、一般的には、税務署の職員が相続人の自宅を訪問する形で行われます。
基本的には2日間で調査が行われ、問題点があれば問題点を整理し、修正申告を行うかどうかの話し合いが税務署と税理士の間で行われます。

6.相続税の税務調査の割合とは?

平成26年に国税庁より公表された『平成25事務年度における相続税の調査の状況について』によりますと、税務調査の件数は実地調査の件数は平成25年度11,909件(平成24事務年度12,210件)となっています。
毎年提出された相続税の申告書(相続税額があるもの)が約50,000件であることから、税務調査が行われる割合は約25%、つまり4件に1件が調査に入っているということです。
課税財産が2億円超の場合には、税務調査が行われる割合は80%以上と大変高い確率になります。
財産が多いところにはかなり高い確率で調査が入ると考えておいたほうが良いでしょう。

7.相続税の税務調査の流れとは?

鍵をもらう

ここからのものは税理士なしでも対応可能ですが、相続専門の税理士に同席してもらい、対応や手続きを全て行ってもらったほうが良いでしょう。

相続専門税理士が同席して税務調査に対応することで、取られるはずの税金を半分以上下げることができた!という事例も数多くあります。

(1)調査の担当者(税務署職員)からの連絡

調査官の調査着手予定日の1週間から10日前くらいに日程調整の電話があります。

(2)相続人の立会

調査の際に相続人全員の立会を求められることがあります。
相続人全員の立会は困難なことが多いのが実態ですが、税務調査があるとの連絡は必ず必要となります。
追加で税金が発生する場合には、それぞれの相続人の支払額が発生してくるためです。

(3)調査場所は?

相続税の調査は、被相続人(相続財産を残して亡くなった方)の生前の生活の拠点である自宅で行うことが原則です。

(4)調査開始時刻と調査担当者の人数は?

調査はおおむね午前10時頃から開始します。調査官は2人組でくるのが原則です。

(5)現物確認調査

立ち合い

相続税調査は、自宅内の状況を確認します。これは相続財産が、調査時にどのような状態で保管されているかの確認です。
また、被相続人の生前の活動状況を知るための重要な手順です。

(6)調査の終了

調査の期間は特に定められていません。複雑で調査困難な場合には1カ月以上に及ぶ場合もあります。
調査を展開して、目途がついた場合には、顧問税理士及び相続人代表に対して調査結果と疑問点を提示されます。

(7)修正申告

調査結果の提示を受けて申告漏れ財産があった場合には、修正申告をします。
修正申告書の提出は、相続人全員の了解が必要です。
相続財産の申告漏れがあった場合には、その税額は相続人全員に跳ね返って全員の負担が増加します。

(8)加算税・延滞税の確認

加算税・延滞税については調査官からしっかりと聞いておく必要があります。

(9)指摘事項への対応

調査を行った結果、相続財産から申告漏れと考えられる事項及びその金額について調査官から提示されます。
税務署で税理士に対して、調査結果の概要を説明されます。
それに基づいて税理士は相続人と指摘事項に対する認否の検討をすることになります。

☆税務調査に強いオススメの税理士事務所紹介

相続専門税理士

税務調査が入ることになった場合、

「何を聞かれるのか?」「追加で税金を取られるのではないか?」など、漠然と不安になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな時、におすすめなのが相続専門の税理士の立ち合いサービスを利用することです。

税務職員が無理な要求をしてくることもあり、誘導尋問のようなことをされるケースもあるようです。

不安な方は一度、相続専門の税理士にご相談されてみてはいかがでしょうか?

税務調査官の質問例と意図

調査官からの質問 質問の意図
貸金庫はお持ちでしょうか? 貸金庫の中身を確認したい。貸金庫の使用量が出ている預金を調べたい。
通帳や権利書などの保管場所はどちらでしょうか? 金庫や書庫の場所はどこか?隠し財産の証明をする資料はないか?
故人の方はどのようにお亡くなりになられましたか? どのような病気であったか、入院の有無、入院期間は?死亡前に引き出された預金の使途は?
故人はどのようなお仕事をしていましたか? 故人の収入はどの程度だったのか?
(相続人に対して)どのようなお仕事をしていますか?
ご実家はどのようなお仕事をしていますか?
預金や株式など、相続人名義のものは本当に本人のものであるかどうか?(名義預金※、名義株ではないか?)
遺言書はありましたでしょうか? 隠している財産はないか?
故人の預金の管理はどなたがされていたのでしょうか? 預金の管理を本人がしていたのかどうか?名義預金、名義株はないか?

8.税務調査後に還付請求を!

税務調査を行われた結果、相続税を追加で徴収されてしまった方もいらっしゃるでしょう。

追加で徴収された方の中には、還付の請求をすれば相続税を取り返すことができる可能性があります。

まとめ

相続税の税務調査の概要をご理解頂けたでしょうか?相続財産が高額な方は80%以上の確率で税務調査があります。
税務調査が入ることを前提にしっかりと準備をすることが重要となってくるでしょう。
なかなか一人で準備することはできないと思いますので、相続が得意な税理士さんに相談しながら準備することをおすすめします。
また、すでに税務調査が迫っているという方は、絶対に税務調査に強い相続専門の税理士に依頼すべきです!

 

この記事の監修者

 

税理士法人TAP 代表社員 内田 勇介

所属事務所:税理士法人TAP(札幌相続相談室)

出身:東京都調布市

学歴:慶應義塾大学卒業

保有資格:税理士、公認会計士、CFP、日本政策金融公庫農業経営上級アドバイザー

趣味:ランニング・絶景観賞・温泉等

 

 

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・本記事は一般的な情報のみを掲載するものであり、法務助言・税務助言を目的とするものではなく、個別具体的な案件については弁護士、税理士、司法書士等の専門家にご相談し、助言を求めていただく必要がございます。
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