相続税対策に必須!保険加入前に知っておくべき知識

更新日:2023.11.28

相続税対策に必須!保険加入前に知っておくべき知識
「相続税対策に保険加入するのが良い」と聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。
しかし、契約のしかたによっては、「相続税」ではなく、「贈与税」や「所得税」が課税されるケースがあります。
「相続税対策のために入った保険が、実は対策にはなっていなかった……」
なんてことにならない為に、今回は「保険加入前に知っておくべき」ことをご紹介いたします。
保険を検討されている方は、ぜひ加入される前に一度ご覧になってください。

1.保険を利用した3つの相続税対策とは?

対策①:節税対策とは

遺産を相続する際、死亡保険金も「みなし相続財産」として相続税の対象となることをご存知でしょうか?

ただし相続税の対象とはなりますが、遺族の生活を守るために、一定の金額が課税対象から控除される非課税枠が設定されています。

(1)1人当たり500万円の非課税枠の活用で節税対策

生命保険の死亡保険金に定められている非課税枠は、次の算式で求めます。

※「法定相続人」とは、相続税法第19条の3において、「相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人」と規定されています。

つまり「法定相続人の数」は、相続の放棄をした人がいる場合であっても、その放棄がないとした場合の相続人の数を言います。

したがって、死亡保険金の非課税金額計算上の法定相続人数には相続を放棄した方も含みます。

現金をそのまま保有している場合には、その全額が相続税の対象になりますが、生命保険の死亡保険金で受け取ると、非課税枠分を控除した金額に対して相続税が課されます。

ポイント

現金で受け取る場合と、死亡保険金として受け取る場合では、同額の場合、死亡保険金でもらう方が相続税の計算のもととなる課税対象金額が下がるため、節税効果があります。

現金をたくさん保有しているような資産家であれば、相続税の対象となる現金を保険に変えておくだけで節税が可能です。

【例】相続人4人(妻と子ども3人)で、妻が保険金2,500万円を受け取った場合

この場合の非課税枠は2,000万円(=500万円×4人)です。妻だけが保険金を受け取った場合でも、2,000万円分を受取金額から差し引くことができます。

【注意点】
解約返戻金も相続税の計算対象になりますが、相続税の非課税枠は死亡保険金が発生した場合に利用できるものです。
 
そのため解約返戻金では、保険をただ解約しただけで、死亡をきっかけとして保険金を受け取ったわけではないため、非課税枠は利用できないということを覚えておきましょう。

(2)養子縁組で節税対策

養子縁組をすることで、生命保険の非課税枠が増えます。

前のページでもご説明しましたが、死亡保険の非課税額は「500万円×法定相続人」で求めます。

つまり、養子縁組することによって、相続人が1人増加すると、非課税枠が500万円増加します。

ただし、無制限に増やせるわけではありません

非課税枠を計算する際に、法定相続人に含めることができる養子の人数は、亡くなった方(被相続人)に子供がいるかいないかで異なります。

対策②:納税資金準備対策とは?

(1)納税資金や葬儀費用の資金を準備する方法

生命保険を利用することで、納税資金や葬儀費用のために現金が必要となった場合にも、すぐにお金の調達が可能となります。

口座名義人の死亡時点で、金融機関の預金は「相続財産」の扱いとなり、遺産分割協議が整うまでは、口座が凍結され、預金の引き出しができなくなります

ただし、民法改正に伴い令和元年7月1日より、金融機関ごとに150万円を限度として引き出し可能となります。

各金融機関によって方法は異なりますが、預金を引き出すには遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書、戸籍謄本などの書類を提出する必要があり、手続きに相当な時間がかかります。

納税するためにお金が必要な場合や、葬儀費用を払うためにお金が必要だったとしても、手続きが終了していなければ口座からお金を引き出すことはできません。

これに対して死亡保険金は、受取人が請求手続きをすれば、5~10日程度で受取人が指定する口座にお金が支払われます。

つまり、保険に加入しておくことで、お金を短期間で取得することができるのです。納税資金や葬儀費用を準備するための手段に、保険は有効だと言えます。

(2)利息の高い保険を利用して納税資金を準備する方法

どの保険に加入するかにもよりますが、一定期間経過した後に解約返戻金の返戻率が105%程度になる商品が多くあります。

そのため、銀行の普通預金に預けておくのに比べて保険を利用して積み立てをした方が、利息が高くなると言えるでしょう。

対策③:遺族に争わせないための対策とは?

(1)円満に相続するための方法

一般家庭に多いのが、相続財産は自宅(持家)と預貯金、生命保険の死亡保険金というパターンです。

生命保険は、明確な遺言書がなく遺産分割協議(遺産を誰に渡すかの話し合い)になっても、死亡保険金の受取人が決まっているため、遺族がモメる可能性が低いでしょう。

遺言書に記載されている内容として、法定相続人が遺留分(最低限相続できる財産)を侵害した場合でも、死亡保険金は遺留分の対象にはなりません。

遺したい人に確実にお金を渡せるので、親族間のトラブルを回避することが可能となります。

2.保険契約の落とし穴とは?

①:契約条件によっては、必ずしも相続対策にはならない!?

生命保険は、契約者、被保険者、受取人が異なると課税関係が変わります。

そのため、契約条件を確定する際には細心の注意が必要となります。

②:保険金を受け取った場合に発生する税金の種類を把握しよう

生命保険は、『死亡保険金を受け取ったとき』と『満期返戻金を受け取ったとき』では、受取人に発生する税金が異なります。

そのため、この2つに分けてご説明致します。

死亡保険金を受け取ったとき

※ 被保険者=保険をかけられた者(この人に何かあった際に保険金が支払われます)

③:3パターンで一番節税できる契約は?

一番節税しやすい契約は、下表のように契約した場合でしょう。

妻か子供が受け取った保険金には相続税が課税されます。

相続税の計算では、『基礎控除』『生命保険による非課税枠』を控除するため、高額な保険金でない限り、非課税になると考えておけばよいでしょう。

また、受取人が妻(配偶者)の場合には、『配偶者の税額軽減』が適用できるため、法定相続分(法律で決められている相続財産の取り分)又は1億6千万円までなら非課税となります。

(注意点)保険の契約者を途中で変更した場合の取り扱いとは

契約者を変更することで、発生する税金の種類が変わります。

契約者を変更した時点では税金はかかりませんが、保険金を受け取るときに以下のように変わります。

支払った保険料のうち、誰が負担したかによって、その負担割合に対して課税される税金が異なってきます。

3.保険金の受取人が相続放棄したらどうなるのか?

①:相続放棄をしても生命保険は受取れる?

契約者と被保険者が同じ場合には、死亡保険金は相続財産ではなく、保険金の受取人の固有の財産となります。

たとえば死亡保険を以下の通り契約していたとします。

死亡保険金は、妻の固有の財産となるため、死亡した夫の財産ではありません。

そのため、妻は相続を放棄しても死亡保険金を受け取ることが可能です。

《注意点》

死亡保険金は、『みなし相続財産』として相続税の課税対象になります。
 
相続放棄をした場合、死亡保険金のみが相続税の課税対象になるということを理解しておきましょう。

②:生命保険金にかかる税金とは?

受け取った生命保険金(死亡保険金)には、相続税が発生します。

【例】相続人が妻のみで、妻が相続放棄をした場合

相続を放棄した場合は、法定相続人にはなりますが、相続人とはみなされません。

そのため、生命保険金の非課税金額の適用を受けることはできません。

したがって、死亡保険金全額が相続税の対象となります。

③:相続放棄をした場合の生命保険金にはいくら税金がかかる?

<保険の契約内容>

上記の場合で、相続人が妻のみだったとします。

夫が債務超過だったため、相続放棄しましたが、死亡保険金を3,600万円取得しました。

相続税を計算する際、相続放棄をした方は、保険金の非課税制度は適用できませんが、基礎控除は適用できます。

基礎控除額は次の算式で求めます。

今回は法定相続人が妻のみであるため、基礎控除額は3,600万円となります。

受け取った保険金から基礎控除額を控除すると、今回の例では課税されないことになります。

ポイント
  •    計算する際の「法定相続人」の人数には相続放棄をした人も含めます。相続放棄をした人は、生命保険金の非課税制度は適用できません。
  •  相続放棄をした方でも、基礎控除は適用されます。

4.保険に加入する前に検討しなければならないこと

①:老後の資産としていくら必要なのか確認する

まず保険の見直しや新規加入する前に、老後に必要な資金があるかどうかを確認しましょう。

厚生年金加入者を前提にすれば7,000万円程度はカバーできるので、1億2,000万円-7,000万円=5,000万円

5,000万円以上の財産を保有しているのであれば、それ以上の財産は余裕をもった財産となります。

その余裕財産がある場合には、遺族の相続税を加味して保険の加入をお勧めします。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

まずは、ご自身の財産を洗い出し、貯金、株式、生命保険など各財産を把握してください。

特に、不動産はどれくらいの価値なのかを計算するのが難しいため、財産がいくらあるのかを把握できない場合には、専門家と一緒に算定すべきでしょう。

そして、各項目で発生する相続税を把握し、分割に不公平はないか、納税資金は準備できているかを確認します。

相続人の負担が大きくならないように生命保険を活用して、受取人と保険金額を決めましょう。

この記事の監修者

代表社員 税理士 髙橋 雅和

所属事務所:税理士法人タカハシパートナーズ

保有資格:税理士・行政書士・宅地建物取引士

専門分野:相続税・法人税・所得税

昭和61年に銀行を退職し、髙橋雅和税理士事務所開業

平成21年に税理士法人タカハシパートナーズ設立

 

税理士法人タカハシパートナーズの詳細ページはこちら>>>

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