家族信託を利用前に確認すべき7つのポイント

家族信託を利用前に確認すべき7つのポイント

近年家族信託が注目を集めております。

今回は、家族信託を利用する前に必ず確認しておいた方がよい7つのポイントをご紹介していきます。

家族信託を利用前に確認すべき7つのポイント

目次

1.最近注目されている家族信託とは?

家族信託(かぞくしんたく)とは、財産管理の一種で、生前に預貯金や不動産などの財産を信頼できる家族に託し、管理や処分を任せる方法です。

そのため、高齢者の資産蓄積や核家族が進む現代において、スムーズに財産継承させることができます。

後見制度や遺言制度の代わりに活用したり、遺言書と信託を合わせて利用したりすることで、被相続人の希望に合った財産管理や承継が可能になるのです。

家族信託には「委託者」「受託者」「受益者」の3人の登場人物が出てきます。

「委託者」は財産を持っている高齢者など、財産を移転させたい本人です。

「受託者」は「委託者」の財産を管理・処分する人物のことで、家族になります。

「受益者」は家族信託の権利(受益権)を持っている人物で、「受託者」が財産を管理・処分することによって利益を得ることができます。

「受益者」も本人の妻や子供など家族になります。

このほか、場合によって「信託監督人」や「受益者代理人」などの専門家が加わります。

家族信託を利用前に確認すべき7つのポイント高齢化が進む日本において、高齢者の財産管理・処分を円滑の行うことが非常に重要です。ここからは、なぜ家族信託のニーズが高まっているのか3つの点から説明します。

2.家族信託が注目される3つの理由とは?

注目される理由① 元気なうちに家族に財産承継でき、親子ともに安心

家族信託は、信託契約を交わすことによって、家族による資産管理・運用がスタートするため、被相続人にとっては元気なうちに資産状況を見届けることができるという安心感があります。死後、財産管理や処分で家族に迷惑をかけてしまうのではないか…という心配を解消することができるのです。また、子どもにとっては親の財産管理が容易にできるというメリットがあるのです。

注目される理由② 本人が認知症になった場合に備えられる

認知症などによって、本人の判断能力の低下してしまうと、資産が凍結されることがあります。このとき有効的だと言われているのが任意後継人制度です。任意後継人制度では、本人が元気なときから財産管理をする後継人を選出しておきます。しかし、実際に機能するのは本人の判断能力が低下した後で、裁判所の監督下で財産管理されるため、活用しにくいというデメリットがあります。一方、家族信託はこうしたデメリットに縛られることなく財産の管理や処分ができるのです。

注目される理由③ 遺言書作成より手軽

相続承継のために、遺言書作成を検討される方も多いかもしれませんが、厳格な方式に沿って作成するため、面倒だというデメリットがあります。一方、家族信託は厳格な方式に従うことがないため、遺言書作成よりも手軽に承継できるというメリットがあります。

 3.家族信託の活用事例をご紹介

ここからは家族信託の活用事例を紹介します。

活用事例その1 先祖代々受け継いだ自宅で、再婚した配偶者と暮らす方のケース

自分が亡くなった後は現在の妻に自宅を使用させ、さらに妻が亡くなった後は先妻との間の長男へ相続させたいと考えています。

しかし、法定相続人である妻に自宅を残すことは可能でも、次に妻が亡くなった場合、誰に相続させるか決定する権利は妻にあります。たとえ遺言で「自分の次に妻が亡くなったときは長男へ相続させる」と残しても、それは法的に無効となってしまいます。そのため、遺言よりも効力の強い方法で、財産を管理したいと考えました。

 <家族信託による解決例>

委託者=自分、受託者=長男、第一受益者=自分、第二受益者=妻とする家族信託を組みます。

このような信託であれば、自分が亡くなった後、妻が自宅に住み続けることができます。さらに、妻の死後は信託を終了させ、残余財産の帰属先を長男にしておくことで、長男に自宅を引き継ぐことができます。

あるいは、さらに第三、第四の受益者を指定しておくことも可能です。そのため、長男の死後は長男の子ども(孫)に引き継がせることもできるのです。

 

活用事例その2 障がいを抱える子を持つ夫婦のケース

障がいを抱えた子どものために財産を残そうと考えていますが、子どもは財産管理を行うことが難しい状態であり、自分たちの死後、生活に不自由するのではないかと心配です。また、子どもには法定相続人がいなくなるため、子どもが亡くなった後財産は国庫に納められてしまいますが、できればお世話になった人や施設に受け取ってもらいたいと考えています。

<家族信託による解決例>

委託者=夫、受託者=信頼できる親戚、第一受益者=夫、第二受益者=妻、第三受益者=子とする家族信託を組みます。

こうすることで、受託者となった親戚から、夫婦の生きている間は自分たちに、死後は子どもに、年金のように生活費を支給してもらうことができます。そして、子どもの死後は信託を終了させ、残余財産の帰属先をお世話になった人や施設に指定しておくことで、財産が国庫に納められるのを避けることができます。

 

活用事例その3 収益不動産や投資資産を持つ高齢の男性のケース

収益不動産や投資資産を複数持っている男性は、加齢に伴い認知症や病気が心配になってきました。現在税金対策のためアパートを建設していますが、建設途中で認知症などを発症した場合、建設会社との打ち合わせや金融機関との契約行為などが行えなくなるため、建設が中断されてしまうことを危惧しています。判断能力がなくなった場合に備えて、成年後見人を選任することを検討していますが、成年後見人には財産を守る権利が与えられていても、投機的運用までは認められていません。判断能力を失った時にも、引き続き相続税の節税や納税資金の確保、積極的な資産運用をするためには、成年後見制度では限界があると感じています。

<家族信託による解決例>

十分判断能力のあるうちに、委託者=自分、受託者=長男、受益者=自分の家族信託を組みます。同時に、委託者の資産管理・処分権限の範囲まで設定しておきます。

こうすることで、例えば所有する土地に建物を建てたり、不動産を購入したりといったことが可能になり、相続税の節税などが実現できます。さらに、財産の給付分配も決めておけば、病気になったときの生活費や施設の入所費用にも困りません。

 

このように、あらゆるケースにおいて家族信託を用いることでスムーズに財産管理が進む可能性があります。

 4.家族信託のメリット・デメリット

このような活用事例とその解決策から家族信託には7つのメリットと4つのデメリットがあります。

メリット

1,高齢者の財産を保護できる

2.倒産隔離機能によって、財産が守られる

3.財産の活用に関する受託者の裁量が後見人よりも広い

4.財産ごとに管理者を変えることができる

5,遺言では実現できない相続が可能になる

6,事業承継を行いやすい

7,受託者に高額の報酬を払う必要がない

デメリット

1,成年後見や遺言のほうが適しているケースも

2.信頼できる受託者の見極めが難しい

3.節税効果はほとんどない

4.遺留分減殺請求をされる可能性がある

上記のメリットデメリットの細かい解説は、下記サイトをご参照ください。

家族信託の7つのメリット4つのデメリットとは?

5.どんな方が家族信託を検討すべきか?

それでは実際にどのような人が家族信託を検討するべきなのかをまとめました。

(1)財産を所持しているが、病気や認知症などで財産管理能力の低下の恐れがある方

家族信託の最大の特徴は、委託者が元気なうちから信託ができる事です。遺言であれば被相続人の死後でなければ執行できず、成年後見制度では家庭裁判所の監督下に置かれます。家族信託であれば、子などの親族にスムーズに財産管理を譲る事ができます。

(2)相続財産の配分を自由に決めたい方

親孝行の長男と不孝者の次男がいたとして長男に多く財産を遺したい場合、長男を受託者にすることでこの財産は「信託財産」となり「相続財産」から切り離す事ができます。委託者の死後、仮に次男が長男に遺留分の請求をしたとしても信託財産に関しては信託法によって守られます。

(3)財産の中で不動産が占める割合が多い方

親族間で不動産を共有していますと、全員の同意を取るのはなかなか大変です。家族信託では受託者(管理する人)と受益者(利益を受ける権利を有する人)は明確に分けられているので、受託者の権限で不動産の売却が可能になります。

(4)2代、3代先まで承継先を決めておきたい方

家族信託は遺言と異なり、二次受益者、三次受益者などと、亡くなったあとの受益者を次々に指定しておく事ができます。

(5)委託者が亡くなったあとに遺された人の生活が心配な方

委託者の配偶者が高齢の場合や、子が身体障害者であるなどの場合、信頼のおける親族を受託者とし、配偶者や子を受益者とする事で、生活費を確実に届ける事ができます。

6.家族信託を利用する場合の流れとは?

家族信託を利用するためには、家族信託契約書の作成が必要になります。家族信託契約書を作成するまでには、どのような手順を踏まなければならないのか。その流れをまとめてみました。

(1)何のために家族信託を利用するのか。目的を明確にする

まずは自分たちが何のために家族信託を利用するのか、財産をどうしたいのかを考えましょう。「近い将来の財産管理が心配だ」「遺産相続で揉めそうだ」「会社を次の代にスムーズに引き継がせたい」など、自分たちの目的を明確にしましょう。

(2)当事者を誰にするのか。受託者や受益者を決める

信託における「当事者」とは、(1)委託者(財産の持ち主)、(2)受託者(財産管理の権利を譲り受ける者)、(3)受益者(利益を受け取る権利を持つ者)、の3つに分けられます。誰が財産を管理するのか、その財産を誰が受け取るかを決めましょう。

受託者や受益者を決めるにあたっては必ず関係者から了解を得るようにしましょう。親族間で了解を得る事がトラブル防止につながります。融資が絡む場合は金融機関からの理解も必要となるでしょう。

また、当事者間だけでのやりとりでは心配な場合、「信託監督人」や「受益代理人」を加える事ができます。

(3)何を信託するのか。信託する財産を決める

あなたが家族信託したい財産は、現金ですか? 株式ですか? 不動産ですか? その財産をどのように信託したいのかを明確にしましょう。

また、信託は今すぐ始めたいですか? それともご自身が認知症になってからでしょうか? 家族信託の始まりやその期間についても考えておきましょう。 

(4)家族信託契約書を作成する

信託の細かい内容が決まりましたら、家族信託契約書の作成に入ります。

信託契約は当事者間(委託者と受託者)の調印書面があれば、たとえそれが私文書でも有効となります。

とはいえ、私文書で作成した信託契約書では、条項に不備や漏れがある事で、のちのちのトラブルや紛争の原因になることもあります。

専門家に文書作成を依頼した上で、公正証書にするのが、一番安心だと言えるでしょう。

(5)信託契約書作成を法律専門家に任せた方がいい理由

家族信託では、さまざまな不測の事態が起きる事があります。

たとえば、受託者が急死してしまった場合、信託財産が誰のものになるか。取り決めが明文化されていなければ受益者の手に渡らない事もあります。

家族信託は家族関係や自分たちの意思に伴って自由にデザインできる反面、多様な状況、不測の事態にも対応できる契約関係でなければなりません。

トラブルを避けるための家族信託が、紛争の種になることほど辛い事はありません。

司法書士など、実務に精通した専門家に相談することをお勧めいたします。

7.家族信託依頼前に検討しておくべきこととは?

家族信託を依頼するときには、事前にしっかりと検討しておかなければならないことが3つあります。きっちりと考えていないと、のちにトラブルが起きてしまうかもしれません。

①どの財産を信託するのか

信託することができる財産にはさまざまなものがありますが、一般的には、現金、有価証券(株式など)、不動産などがあります。

②誰に信託するのか

家族信託では、家族や親族の誰に財産を信託するのか(受託者を誰にするか)がポイントになります。受託者は、受益者の利益のために財産の管理や処分をしなければなりません。そのため、委託者がなんのために家族信託を活用しようとしているのかをしっかりと理解してくれる、信頼できる人に信託するべきです。

③何のために家族信託をするのか

受益者にどんな利益を与えようとしているのか、つまり、家族信託を何のために行うのかをはっきりさせなければなりません。その上で、相続人全員に理解してもらえるように話し合っておくことも重要です。受益者以外の相続人にとっては、相続できる財産が減ってしまうかもしれないからです。

また、財産の管理や処分が適切に行われているかのチェック体制にも気をつけておきましょう。信託銀行などに信託するよりも管理がずさんになってしまう可能性もあるため、受託者を2人にして相互チェック機能を持たせたり、信託監督人をおいたりして対策を取っておくのも効果的です。