遺言書が複数見つかり、作成日も別々の場合、どの遺言書を優先すればいい?

遺言書が複数見つかり、作成日も別々の場合、どの遺言書を優先すればいい?

遺言は2通以上見つかったけど、どうしたらよいのですか?というご質問は、実務上もよくあります。

今回は、このご質問に回答していきます。

遺言書が複数見つかり、作成日も別々の場合、どの遺言書を優先すればいい?

よくあるご質問 作成日の異なる遺言が見つかりました。その遺言書から優先して執行すればいい?

回答

2通以上の遺言書があってそれぞれ内容が違う場合、作成日が後になっているものが優先されます。

作成日とは、全ての遺言書に記載されるべき日付のことをいいます。

回答の解説① 遺言の形式を欠いている場合は、形式の整っている遺言書が優先

たとえ日付が後であっても、遺言の形式を欠いている場合は、正しい形式のものを有効な遺言書として優先的に扱います。

もし日付が「平成○年4月13日」というように具体的で明確な遺言書と「平成○年4月吉日」のような不明確なものがあったら、前者を優先します。

遺言書は民法で形式が定められており、これに従わないものは無効になります。法律上の権利や義務を有効に生じさせるためには、次の2つを満たす必要があるのです。

・遺言を書くことのできる(遺言能力を有する人)が書く

・法律で決められた形式(遺言の方式。普通の方式と、遭難のように特殊で差し迫った状況のみ許される特別の方式があります)で書く

これが単に故人の意思を表したエンディングノートやいわゆる遺言状(ユイゴンジョウ)などと、法律行為として作成する遺言書との違いです。

 民法では、遺言者はいつでも遺言の全部又は一部を撤回することができると定めています。遺言が複数あって内容が食い違うときは、後の遺言によって先の遺言を撤回したとみなすのです。

回答の解説② 遺言の形式とは?

普通の方式の遺言には自筆証書、公正証書、秘密証書の3つがあります。

これらに序列はなく、複数見つかった遺言書がそれぞれ別の方式なら、日付で優先順位を決めます。

公正証書遺言と秘密証書遺言は、作成されたかどうか公正証書遺言検索システムで調べることができます。

 公正証書は公証人という法律のプロ(しかも公務員)が作成するので安心ですが、無効になることが多いのは自筆証書です。

 自筆遺言証書の要件は次のとおりです。

・遺言をする人が、全文を直筆で書く(ワープロ、代筆はダメ)

・日付を書く

・氏名を書く

・印を押す(認印で構いません)

 日付は吉日という書き方をすると無効だと前述しましたが、「4月末日」なら4月30日だとわかるので有効です。

 ちなみに秘密証書遺言の要件は以下のようになっています。

・遺言をする人が、遺言書に署名捺印する

・その印で封印する

・公証人1人と証人2人に封印した遺言書を差し出し、氏名と住所を告げる

・公証人は日付と告げられた氏名住所を遺言書に書く

・公証人・証人2人・遺言をする人が署名捺印する

こちらはワープロでも構いませんが、自筆遺言証書の要件を備えていれば秘密証書遺言としては無効であっても自筆証書遺言として有効ですので、自筆するとより確実です。

 自筆証書と秘密証書は、訂正の方法まで厳しく決められています。変更箇所に訂正印を押し、余白などに変更した場所と変更した旨を書き、署名しなければなりません。これを守らないと訂正箇所のみ無効になりますが、遺言全体が無効になるということではありません。

公正証書遺言以外は、裁判所で「検認」という手続きをとります。内容を確認し、改ざんを防ぐためのものですが、これをしないからといって遺言そのものが無効になるわけではありません。また、裁判所による検認は遺言が有効かどうかを判断するためのものではありません。

遺言が無効かどうかで争う場合は、一般的な流れだとまず家庭裁判所に調停を申し立てます。ここで納得いく結論にならなければ、裁判所に遺言無効確認訴訟を提起します。

以上、大事なポイントとしては、遺言書が法律上有効になるためには民法の形式に則っていなくてはならないこと、有効な遺言書が複数ある場合は日付が後のものが優先されるということの2つです。