相続放棄しないと親の借金が自分の借金になってしまうかも?

相続放棄しないと親の借金が自分の借金になってしまうかも?
「借金まみれの父が亡くなりました。その父の息子である私は、父の借金を返済しなければならないのでしょうか?」
 父が亡くなれば、基本的には、その息子は相続人となるため、父親の財産を相続します。この「財産」には、不動産や預貯金、株式、現金などプラスの財産だけでなく、借金、つまりマイナスの財産も含みます。つまり、息子は父親の借金を相続するため、原則として、借金を返済しなければなりません。
このとき、父親に借金以上の財産があれば、特段問題はないでしょう。父親の財産を処分して借金を返済し、残った財産を相続すればよいのです。

しかし問題は、父の財産の内訳がプラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合、つまり、いわゆる「債務超過」だった場合です。このとき、息子である「私」は、自分の財産を使ってでも、父親の遺した借金の返済をしなければならないのでしょうか…。  


相続放棄しないと親の借金が自分の借金になってしまうかも?

1.「相続放棄」という選択

放棄
借金まみれの父が亡くなり、息子である私が、父の借金を返済しなければならないのでしょうか?
「私」は、「相続放棄」をすれば、父親の借金の返済の義務がなくなります。つまり、借金を返済しなくても済むのです。

しかし相続放棄をすると、「はじめから相続人ではなかった」ことになってしまいます。もちろん、父親と息子である「私」との間の親子であった事実が無くなるわけではありません。父と息子、父が亡くなって相続放棄をしたとしても、親子は親子です。ただ、「相続人としての子はいない」ことになるのです。

『相続人』についての基礎知識は、5分でわかる!相続する人(相続人)って誰?を参照して頂ければ身につきますよ。

相続放棄の具体例を見てみましょう。
母親は既に他界、父ひとり子ひとりの状態で父が亡くなったとします。

ここで子が相続放棄をします。

すると、子は「はじめから相続人ではなかった」ことになるので、「誰が財産を引き継ぐか」という観点では、「故人(亡くなった方)にはじめから子はいなかった」ということになるのです。

そうなった場合、故人である父の財産は、その親、つまり子から見れば祖父母が父の財産を引き継ぐことになります。祖父母をはじめとする父の上の世代の人間が既に他界しているのであれば、父の兄弟姉妹が、父の財産を相続することになるのです。

ですから、借金を免れるために子が相続放棄をすると、その借金は祖父母、あるいは父の兄弟姉妹が背負わなければならなくなってしまいます。

【相続放棄を選択する際のポイント】

相続放棄は、「自分が相続放棄をすると誰がその借金を背負うのか」を考えた上で、その人たちと相談して行う必要があるといえるでしょう。

2.「相続放棄」の手続方法

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それでは、相続手続きはどのようにすればよいのでしょうか。親戚中に「私は相続放棄します!」と宣言すればよいのでしょうか…。

相続放棄をするには、家庭裁判所に出向き、必要書類とともに届出をしなければなりません。さらに届出をするだけでなく、家庭裁判所にその届出を認めてもらわなければなりません。

(1)どこの家庭裁判所に届出をするか

 亡くなった方の住民票の届出のある場所を管轄する家庭裁判所に届出をします。

(2)届出の際に必要となるもの

  1.  相続放棄申述書※下記参照
  2.  亡くなった人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  3.  亡くなった人の住民票除票または戸籍附票
  4.  届出をする人の戸籍謄本
  5.  収入印紙800円分
  6.  郵便切手(各家庭裁判所により、切手の額、枚数等は異なります。だいたい1,000円程度です)

 ※場合によっては、届出をする人が亡くなった人の相続人であることを証明するために、多くの戸籍が必要となる場合があります

※相続放棄申述書は下記のURLの内容を作成ください。

http://www.courts.go.jp/kyoto/saiban/katei/houki/ 

  家庭裁判所に備え付けてある書類です。インターネットからも取得できます。これに必要事項を記載し、提出します。

(3)届出の方法

 (2)の書類をそろえ、家庭裁判所に提出します。

(4)家庭裁判所から「照会書」が届く

 間違いなく自分の意思で相続放棄をするのか、またなぜそうするのか等を回答します。

※この照会手続は、各裁判所により方法が異なります。省略したり、逆に面談を要求される場合など様々です

(5)家庭裁判所に相続放棄が認められると…。

 「相続放棄申述受理通知書」という書類が、家庭裁判所から送られてきます。

※注意点 相続放棄が認められたとしても、借金の債権者に対して家庭裁判所がその旨を通知してくれるわけではありません。(4)の「相続放棄申述受理通知書」を債権者に提示する(債権者によっては、「相続放棄申述受理証明書(家庭裁判所で別途発行してもらえます)」を求めることもあります)などして、相続放棄した旨を伝えなければなりません。

3.「相続放棄」には期限がある

期限がある

借金から免れるため、相続放棄という方法があると述べました。そしてそれは、家庭裁判所に申立てることによって行うとも述べました。しかし、相続放棄はいつでもできる、というものではありません。法律上、期限が定められています。民法という法律の第915条に「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と定められているのです。
非常にわかりにくい、曖昧な表現です。この条文の解釈については、専門家の間でいくつかの説があるほどです。ここでは難しい説明はしませんが、「亡くなった人から自分が何かを相続することを知ってから3ヶ月以内」くらいに考えておけば良いでしょう。

具体的な話に戻します。
前述の例でいえば、(厳密には違うのですが、簡単にいうと)借金まみれの父が亡くなってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に必要書類をつけて届出をしなければならない、ということです。これは、皆さんが考えている以上に急いでやらなくてはなりません。

「四十九日が過ぎてから、ボチボチ手続きやるか…」

などと考えていると、アッという間に3ヶ月が過ぎてしまい、手遅れということにもなりかねません。ですから実際には、葬儀が済んだらすぐにでも相続放棄をすべきかどうかの検討、もっといえば「故人に借金はなかったのか…」の調査を始めなければならないということになるでしょう。

ただ、救済手段はあります。3ヶ月以内に相続放棄をするかどうか決めることが出来ない特別の事情がある場合は、家庭裁判所に「相続放棄のための申述期間延長」を申請して、これが認められると、期間延長をしてもらえる場合があります。
しかしあくまでも、「期間延長をしてもらえる場合がある」であり、「申請すれば必ず期間延長してもらえる」というものではありませんので、急いで手続をするに越したことはありません。

さらに、いったん相続を受けてしまった場合(単純承認をしてしまった場合)は、たとえ3ヶ月経過していなくとも、もう相続放棄をすることはできません。相続を受けてしまった場合とは、故人の不動産を既に売却してしまった、とか、故人の預金を既に使ってしまった場合などです。

《相続放棄の期限が過ぎた場合の関連記事》

相続放棄の期限が過ぎてしまった場合の対処法とは?

4.相続放棄を検討した方がいい人

相場

 「借金まみれ」を例に相続放棄の説明をしてきましたが、相続放棄を検討した方が良い人というのは、なにもそれに限ったことではありません。以下のような場合は、相続放棄を視野に入れて検討するのも方法です。

  • 亡くなった人(被相続人)が、誰かの保証人になっているかもしれない場合
  • 生前、亡くなった人(被相続人)との交流がなく、生活ぶりがわからない場合(あとから借金がでてくるかもしれない)
  • 無用な相続争いに巻き込まれたくない
  • 亡くなった人(被相続人)に借金はないが、財産が資産価値のない山林や崖地などばかりで売却が難しく、維持費用ももったいない
  • 相続人のひとりに財産を集中させたい(「家長」とか「本家」がすべて引き継ぐイメージ)

5.相続放棄と限定承認の違いを把握しよう!

相続放棄とよく比較されるのが、限定承認になります。

限定承認とは、プラスの財産の範囲内で債務を引き継ぐことです。

【限定承認の事例】

現金を1,000万円、借金を1,500万円もつ方が亡くなった場合、普通に相続してしまうと、現金1,000万円と借金1,500万円を相続することになるため、500万円の借金だけが残ります。

限定承認という制度を利用することで、プラスの財産の範囲内で債務を引き継げば良いので、その相続人が借金を1,000万円返済すれば、500万円分の借金は相続しないせず、プラスの1,000万円を相続できる、という制度です。

限定承認の詳細は、

限定承認で絶対に相続したい資産を守る方法!!

をご参照ください。

おわりに

相続放棄が家庭裁判所に認められると、原則として、その相続放棄を撤回をすることはできません(相続放棄の撤回が認められるケースとしては、その相続放棄が詐欺、脅迫等によるものだった場合などです)。例えば、「借金ばかりだから…」と相続放棄してしまうと、その後で故人の不動産が発見されたといっても撤回することはできません。

ですから相続放棄をするにあたっては、故人の財産をしっかりと、かつ早急に調査し、よく考えた上で行うことが必要です。

またこの文章を読んで、「相続放棄の内容はわかったけど、実際に手続するのは難しそうだ」とお考えの方もいるでしょう。そのような方は、弁護士、司法書士などに依頼をすれば、相続放棄の手続を代理して行ってもらうことができます。
報酬の相場は100,000円くらいから…というところが多いようです。弁護士や司法書士に、相談してみてはいかがでしょうか。
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