遺留分と生前贈与の関係をご紹介【3つの事例付】

遺留分と生前贈与の関係をご紹介【3つの事例付】

遺言によって特定の相続人に全財産が相続される場合でも、一定の規定を満たす相続人には遺留分(いりゅうぶん)という最低限の取り分が保障されています。

この遺留分は、相続財産のみならず生前贈与された分も含めて計算できることをご存知でしょうか。

遺留分と生前贈与の関係を理解し、正しい遺留分の算出方法をぜひ知っておきましょう。 


遺留分と生前贈与の関係をご紹介【3つの事例付】

1.「遺留分」と「生前贈与」とは

そもそも遺留分と生前贈与とは何を指すのでしょうか。まずはこの2つの意味から解説していきます。

▪遺留分

亡くなった人の財産は、一般的に配偶者や子供といった法定相続人へ民法で決められた割合で相続されます。しかし遺言書が残されていた場合はその内容が優先されるため、特定の1人が全財産を引き継ぐ、というケースも出てくるわけです。他の法定相続人にとってはショックですよね。

この時に「一定の条件を満たす相続人には、最低限の遺産の取り分を保証してあげよう」というのが遺留分です(民法第1028条)。自分の遺留分が侵害された相続人は、遺留分減殺請求権を行使することで、民法で決められた割合の財産を相続することができるわけです。

▪生前贈与

この遺留分の金額に影響を及ぼすのが生前贈与です。

生前贈与とは、被相続人が生きているうちに自分の財産を人に無償で分け与えること。与える側(贈与者)と受け取る側(受贈者)との間で成立する契約になります。

自分の死後に起こる可能性のある相続人間のトラブルを避けたい、節税したいといった場合などに有効な手法でもあります。

※生前贈与の節税の関連記事については、下記サイトをご参照ください。

保険を使った生前贈与の相続対策とは?

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2.生前贈与が遺留分の請求対象に含まれる3つのパターン

生前贈与が発生すると被相続人の死後に残される財産は少なくなりますので「遺留分も少なくなってしまうのでは?」と不安になる人もいるのではないでしょうか。

ここでは遺留分の請求対象に生前贈与された財産も組み込まれるパターンをご紹介します。

1)相続開始から遡って1年以内になされた生前贈与

被相続人の死亡日から遡り1年以内になされた贈与は、遺留分の請求対象となります(民法第1030条前段)。

これは法定相続人に限らず、誰に対して行われた生前贈与であっても遺留分の計算対象となります。具体例をみてみましょう。

事例1:被相続人(A)には妻と息子がいます。Aは亡くなる半年前に愛人に5000万円を贈与していました。

Aの死後、遺言には残りの財産1000万円も全て愛人に譲るとあります。息子は愛人に対して遺留分を請求することにしました。

→A死亡時の財産は1000万円ですが、5000万円の生前贈与は死亡日から遡って1年以内になされていたので、合計6000万円に対する遺留分を愛人に請求できます。遺留分を侵害された相続人は配偶者と子供であり、それぞれ1/4が遺留分ですので1500万円が息子の遺留分になります。

※遺留分は相続人ごとにことなりますので、どれくらい請求できるのかを確かめたい方は、下記の記事をご参照ください。

相続発生前に絶対に覚えておきたい『遺留分』の知識

2)当事者双方が遺留分を侵害することを分かった上で行った生前贈与

相続開始から遡って1年以上昔になされた生前贈与であっても、当事者双方が遺留分権利者に損害を加える贈与であると知っていた場合は、贈与した財産も遺留分の請求対象財産に組み込まれます(民法第1030条後段)。

被相続人の全財産を具体的に知らずとも、生前の贈与額が遺留分権利者全体の遺留分を侵害するほどのものであると予測できるなら本件に該当します。

しかし「はたして贈与した金額が遺留分を侵害するほど大きいのか」という争点は被相続人の年齢や職業、将来性など様々な要因もからんでくるため、ケースバイケースといえるでしょう。

事例2:事例1と同じ登場人物で考えてみましょう。Aは中小企業のごく一般的なサラリーマンであり、愛人もそのことを知っています。その上で愛人は生前贈与として5000万円を相続開始の5年前に受け取っていました。

→例え生前贈与されたのが5年前であろうと、サラリーマンにとって5000万円は全財産のうち相当な割合であるという事が予測できます。従ってこのケースでは、双方が遺留分に損害を加えると分かっていたと判断される可能性は高いといえるでしょう。

3)特別受益と判断された財産

特定の相続人が被相続人から生前に多額の贈与を受けていた場合、その分を無視して財産を分配してしまうと相続人間の取り分が不公平になってしまう可能性があります。

そのような問題を解決するためにあるのが「特別受益」という制度です。

特別受益は、遺贈、婚姻や養子縁組のための費用、開業資金や住宅購入資金など生計の資本としての費用が該当します。

相続人が過去に特別受益を受けていた場合、相続財産に特別受益を加えた総額を相続財産として計算する「特別受益の持ち戻し」を行います。そして特別受益のあった相続人は、法定相続分から特別受益分を引いた差額を相続することになるのです。ただし被相続人が「特別受益を持ち戻さなくてよい」と意思表示した場合には、遺留分に反しない範囲で被相続人の意思が尊重されます。

事例3:シングルファーザー(A)には3人の子供(B、C、D)がいます。このうちBは過去に開業資金として3000万円の特別受益をAから受け取っていました。Aの遺言は見つからず残された相続財産は600万円でした。特別受益をすでに受けているBに対し、CとDは不満を感じています。

→相続財産の総額は600万円+3000万円=3600万円なので、子供一人当たりの相続分は1200万円です。この時点ですでに3000万円の特別受益を受けているBは相続分がなくなるため、600万円をC、Dで分けることになります。

ここで問題になるのが遺留分です。総額3600万円に対する子供3人の遺留分は1/6ずつの600万円。それなのにC、Dは300万円しか相続できないわけですから、双方は差額の300万円を遺留分としてBに請求するこができるわけです。

3.遺留分の対象となる生前贈与の評価はいつ時点で行うのか?

おさらいしておくと、

遺留分とは、財産相続において、遺族(配偶者と子と父母。兄弟には認められない)への最低限の財産保証の事です。

そして、生前贈与とは被相続人が健在のうちに、自己の財産を無償で相手方に与える事ですが、この生前贈与財産も遺留分の対象となります。

さて、生前贈与の場合、贈与がなされた時期と被相続人が亡くなった時点とでは、価額が異なる事があります。

(1)生前贈与の財産は、いつの時点で評価する?

生前贈与財産の評価は原則的には相続開始の時点、つまり被相続人が亡くなった時点の評価に基づいて算出していきます。

ですから、贈与時の価額を、相続開始時点の価額に換算しなければなりません。

現金や預貯金の場合は、贈与時期から相続開始の時点までの物価指数や物価変動率を用いて価格を換算します。

たとえば、生前贈与で1000万円の現金を取得したとしても、相続時の評価では1000万円とはみなされずに、相続開始の時の価値に換算するのです。

株式や不動産の場合は、贈与時期ではなく、相続開始の時点での価値で評価することが多いようです。

1000万円と評価されていた不動産を贈与によって入手したものの、相続開始の時に5000万円と評価された場合は、5000万円の財産としてみなされるのです。

まとめ

遺留分は自分から請求しないともらうことができない、相続人の権利です。請求できるだけの遺留分がないように思えても、思わぬ生前贈与や特別受益で予想以上の遺留分がある場合も。「これはどうかな?」と思ったらまずは専門家に相談してみましょう!

遺留分減殺請求を弁都市に依頼した方がよい理由や、弁護士に頼んだ場合には、どれくらい費用がかかるかをまとめましたので、下記の記事を是非ご参照ください。

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