遺言書と違う遺産分割をしたい時の対処法

遺言書と違う遺産分割をしたい時の対処法

 

 

相続が発生した時に法的な効力が発生する書類は、遺言書だけです。

ただし遺言書があるとしても、その内容のすべてが自動的に認められるというわけではありません。

相続人には遺留分減殺請求権という一定の財産に対する権利が認められていて、いくら遺言書があるからといっても、遺留分を侵害した内容になっていれば、自分の遺留分に相当する遺産を取り戻すことが出来ます。

また、相続人全員が合意すれば、遺言書と違う遺産分割協議をすることも出来ます。


遺言書と違う遺産分割をしたい時の対処法

1.遺言書の効力

最近は終活としてエンディングノートが流行していますが、エンディングノートがあっても正式な遺言書としての効力はありません。

相続が発生した際に法的な効力が発生するものは、遺言書だけです。

遺言書の種類は、以下のものがあります。

■自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、被相続人が自分で書いた遺言書です。

自筆で作成しなければならず、ワープロや他人の代筆は無効となります。

費用をかけずに1人で作成することが出来ますが、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。

自筆証書遺言は、その存在を信頼出来る人に明らかにしておかないと、せっかく作成しても遺言書そのものが発見されずに終わってしまう危険性がありますし、偽造や変造の恐れがあるというデメリットもあります。

■秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、封書に入れて封印した遺言書を、被相続人が公証役場に持っていき、その遺言書が確かに本人によって作成されたということを、公証人と2人以上の証人に証明してもらうタイプの遺言書です。

■公正証書遺言

公正証書遺言とは、相続人が生前に公正役場に行き、2人以上の証人が立ち会って、公証人が口述筆記して作成する遺言書のことです。原本が公証役場で保管されていて、内容が偽造・変造される恐れがないため、法的に最も確実であるというメリットがありますが、作成費用や手間がかかるというデメリットもあります。

(1) 遺留分と遺言書の関係

遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して、法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことです。

自分で築いた財産を誰に相続させるかは、原則として本人の勝手です。しかし、だからと言って本人の自由を無制限に認めると、残された家族が生活に困ることから、一定範囲の相続人に対してはこの遺留分が認められています。

遺言書があってもこの遺留分を侵害されている相続人が「遺留分減殺請求」を起こした場合には、遺言書通りの遺産分割がされない可能性があります。

遺言書を作成する際には、この遺留分に十分配慮して作成しないと、遺言書の存在がかえって相続トラブルの元になりかねないので注意が必要です。

(2) 相続人全員の合意

遺言書がある場合でも、相続人全員が合意すれば遺言書とは違う内容の遺産分割を行うこともできます。

相続人が妻と子供2人である場合、その相続人3人全員の間で、遺言書と異なる内容の遺産分割協議を行えば、遺言書の内容ではなく、その遺産分割協議が優先されるのです。

たとえば、不動産を相続させるという内容の遺言書を作成しても、相続人に納税すべきお金がなければ、延納するか不動産を売却してその売却代金の一部で納税するしかないからです。

2. 遺言書を残した方がいいケース

遺言内容は、民法の法定相続分よりも優先するため、例えば相続分のない「内縁の妻」や「遠い親戚」等に財産を譲りたい場合等は、必ず遺言書がなければなりません。

相続人の仲が悪い場合や子どもがいない夫婦など、相続トラブルに発展する可能性がある場合にも、遺言書を残すことをおすすめします。

(1) 相続人の仲が悪い

相続人同士の仲が悪い場合には、遺留分等に配慮しながら遺言書を作成しておくことを強くおすすめします。

たとえば同族会社を経営していて、その会社の後継者が決まっている場合などは、後継者が同族会社の株や会社の経営に必要な財産を相続しなければ、会社の経営そのものが困難となってしまいます。

先祖代々の土地がある場合には、その土地を後継ぎが引き継げるように遺言書を作成しておかないと、土地を引き継ぐことが出来なくなってしまいます。

相続トラブルを防ぐために、相続の方針について親が子どもに言い聞かせておくことはもちろん大切ですが、やはり最終的な決め手は遺言書を作成することだということになります。

(2) 子どもがいない夫婦

夫婦に子どもがなく夫が亡くなった場合には、相続人は妻と夫の兄弟姉妹となり、法定相続分は妻が4分の3、夫の兄弟姉妹が4分の1となります。

「住んでいる自宅を妻に残したい」と思っていても、夫の兄弟姉妹から相続分を主張されれば、自宅を売却するしかなくなってしまい、住む家を手放さなければならなくなってしまいます。

兄弟姉妹には遺留分がないので「自分の全財産を妻に相続させる」という内容の遺言書を作成しておけば、妻がすべての財産を相続することが出来ます。

妻が安心して老後を過ごすためにも、遺言書の作成を検討されることを、強くおすすめします。