「妻に全財産を譲りたい」…その方法とは

「妻に全財産を譲りたい」…その方法とは

相続が開始した場合、相続人が法律上どのくらいの取り分を持つのかは決まっていますが、相続人のうち特に妻に多くの相続をさせたいと言った場合には、どのような対策をとればよいのでしょうか。

ここでは、妻に全財産を譲るための方法をケースごとにまとめました。


「妻に全財産を譲りたい」…その方法とは

1.相続は原則「自由」

個人の財産は、原則として個人の意思によって自由に処分することができます。

しかし、この原則と実情を調和させるために、民法では「遺留分を侵害しない」という限度を設けています。

遺留分とは、民法で定められている相続人が、自分の取り分として主張のできる相続財産における割合のことを言います。

たとえば、夫が愛人に全財産を渡す旨の遺言をしたとなると、残された妻子が生活に困窮することも考えられます。そこで、民法では、妻子が一定の割合(この場合は2分の1)を遺留分として取り戻すことができると規定しているのです、これを遺留分減殺請求といいます。

この遺留分は請求権を行使するによってはじめて「好きなように相続させることはできない」という結果になるので、行使されなければ個人の財産は、原則として個人の意思によって自由に処分でき、トラブルが起こることはありません。

しかし、相続はこれまでは仲の良かったご家族でも、思いもよらないトラブルに発展することも珍しくありません。

 

せっかく遺言書を残しても、自分の遺留分を侵害された相続人が、遺留分減殺請求を行なう事で遺留分を取り戻す事が可能となってしまうのです。

 

※ただし、遺留分減殺請求権はタイミングが大変重要で、相続開始後1年以内に行使する必要があります。

贈与や遺言の活用は重要

財産を自分の思い通りに処分するためには、贈与や遺言を活用することが考えられます。生前に最大限の贈与分を指定し、遺言書で遺言しておくのです。

しかし、この方法でも遺留分を侵害してしまえば、トラブルに発展することもあります。ここでは、遺留分を侵害せずに、好きなように財産を処分するための方法や注意点についてご紹介します。

2.妻に相続させたい時の注意点

通常、妻の法定相続分は2分の1です。仮に相続財産が自宅のみであれば、通常はその自宅を妻に全部相続させたいと思うものでしょう。

子どもがいる場合でも、その親の気持ちを理解して遺言で「妻に全部相続させる」としても、子どもが遺留分減殺請求をすることはあまりありません。

 

しかし、妻と子どもの仲が悪い場合や遺言書がない場合などは、注意すべき点が多々あります。

 

ここでは、妻に全財産を譲りたいと思う場合で、遺言書を作成したほうがよいケースについてご紹介します。

(1) 子どもがいない場合

子どものいない夫婦の場合(孫、親、祖父母もいない場合)には、相続財産の四分の一は夫の兄弟姉妹にあります。

そこで、その兄弟姉妹から遺留分減殺請求されると、財産を処分して兄弟姉妹に相続分を分けなければならなくなってしまいます。

 

「相続財産は、自宅だけ」というようなケースでは、長年夫婦で住んできた自宅を売却しなければならないこともあるのです。

そこで、妻に全財産を相続させ、住む場所に困らないようにしてあげたいと思うならば、遺言書でその旨を明らかにしておく必要があります。

兄弟姉妹には遺留分がありませんので、遺言書を残しておけば、全財産を妻に譲ることが可能となります。

(2) 子どもがいる場合

子どもがいる場合には、相続分は妻が2分の1、子どもが2分の1となります。

しかし、妻と子どもの仲が悪い場合や、子どもの管理能力が低く費消されてしまうような恐れがある場合には、妻に全財産を残したいと思うでしょう。

しかし、全部の財産を妻に遺贈すると、この遺留分を侵害することになります。子の遺留分は何人いても法定相続分の2分の1になりますから、遺留分を侵害しない限度では、最大限相続させたいと思うならば、全財産の4分の3を妻に相続させることができます。

正常な親子関係であれば、子どもが母親に対して遺留分減殺請求をすることはありませんので、この方法で妻に相続をさせることができます。

ただし、親子関係がうまくいっておらず、子どもが母親に遺留分減殺請求をする心配がある場合には、遺言書を作成しておくことをおすすめします。

(3) 子どもがいなくて甥・姪がいる場合

親も子ども、兄弟姉妹もおらず、甥・姪だけいる場合には、相続人は妻と甥・姪となります。甥・姪は親子と違って縁が薄い場合も多く、遺留分減殺請求をする可能性は大いにあります。

このような事態を防ぐためには、妻に全財産を遺贈するという遺言書が不可欠です。

甥・姪は、遺留分をもっていないので、遺言書を作成すれば、妻に全財産を残すことができます。

(4) 愛人の子どもがいる場合

妻に子どもがいなくて愛人に子どもがいる場合、相続人は妻と愛人の子ども(ただし認知していることが必要)となります。法定相続分は妻が2分の1、愛人の子どもが2分の1となります。

妻に全財産を遺贈するとして遺言書を作成しても、愛人の子どもには遺留分があり、この遺留分は相続財産の4分の1ですから、愛人の子どもから本妻に対して遺留分減殺の請求がなされると、本妻の相続分は4分の3に減少してしまうことになります。

本妻に子どもがいる場合には、本妻の子どもの数が多ければ多いほど、遺留分の割合が低くなりますが、トラブルが発展する可能性は否定できません。

以上、妻に全財産を譲りたいと考える場合の方法と、注意しておきたい点についてご紹介しました。

これまで述べてきたとおり、「妻に全財産を譲りたい」と考えるなら遺言書の作成が大変重要となります。遺言書がある場合とない場合で、争続になるかどうかに大きな違いが生じます。

ただし、極端に不平等な遺言書を作成してしまうと、遺留分の主張がなされることもあります。遺言書を作成する際にも、相続対策をする際にも、早めに税理士等の専門家に相談して、かえってトラブルを誘発しないよう工夫することが大切です。


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