約40年ぶりの民法改正。相続にどのような変化が起こるの?

約40年ぶりの民法改正。相続にどのような変化が起こるの?

2018年1月16日に要綱が取りまとめられ、法制審議会により2018年1月22日からの通常国会に民法改正に関する改正案が提出されることとなりました。

通常国会の日程は1月22日~6月20日となっていますので、可決された場合には6月20日以降に発表されることになります。今回の改正によって相続にどのような変化がおこるのかご紹介したいと思います。


約40年ぶりの民法改正。相続にどのような変化が起こるの?

1.配偶者保護を目的とした改正

約40年ぶりの民法改正。相続にどのような変化が起こるの?

今回の法改正での大きな特徴は、被相続人の配偶者の保護があります。

現行の民法では、被相続人の財産はすべて遺産分割によって財産分与を確定していく形となります。そのため、居住していた不動産以外に財産を所有していないケースでは、たとえ同居の配偶者がいたとしても、遺産分割の対象となり、他の相続人に遺産を渡さなければならないという理由から自宅を売却しなければならないというケースがありました。

このようなケースを避けるために、配偶者の保護を目的とした制度が新たに設けられています。

(1)配偶者短期居住権

配偶者短期居住権とは、被相続人が所有していた不動産(遺産分割の対象となる不動産)に配偶者が居住していた場合、以下のいずれか遅い日まで、配偶者は当該不動産に無償で居住することができる権利を言います。

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(2)配偶者居住権

今回の改正では、被相続人が所有していた不動産に対し、あらたに「居住権」を設けています。これにより、被相続人が所有していた不動産には「所有権」と「居住権」の2つに分けられることになります。

配偶者がこの居住権を取得した場合、当該不動産の所有権を他の相続人が取得したとしても当該不動産に居住することが可能となります。配偶者居住権を取得することができる要件は下記の通りです。

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上記2つの居住権は譲渡などを行うことはできません。また、短期居住権は相続税の評価対象となりますが、配偶者居住権は評価対象となるため相続税への影響が予想されます。しかしながら、具体的な評価方法等は発表されていないため、詳細に関しては今後の動向を確認しておく必要があります。

2.遺産分割制度

(1)特別受益の持戻し免除

婚姻関係が20年以上経過している夫婦間で居住用不動産の贈与又は遺贈があった場合、当該不動産は遺産分割の対象から外すことができるようになります。

現行の民法では、贈与税の配偶者控除の対象となる不動産であっても、遺産分割時にその不動産を持戻して遺産分割の対象とする必要がありましたが、民法改正が行われた場合、持戻を行う必要がなくなるため、配偶者は引き続き当該不動産に居住することができます。

(2)仮払い制度創設

仮払い制度の創設とは、被相続人の預貯金の払戻しに関する制度です。

現行の民法では相続発生時に、被相続人の口座は凍結され遺産分割が終了するまで払い戻し等が出来ないこと状態となります。遺産分割終了前に払戻しが必要な場合には、他の相続人の委任状等を用意するなど手続が多く簡単に払戻を行うことが出来ませんでしたが、

今回の改正が成立すると法定相続分×1/3までは他の相続人の合意を得ずに払戻しを行うことが可能となります。

(3)相続人以外の寄与分

相続人ではない親族(6親等以内の親族、3親等以内の配偶者等)が被相続人の介護等を行っていた場合、相続人に対して寄与分を請求することができるようになります。ただし、事実婚等、戸籍上の親族に該当しない人は対象外となります。

3.その他の改正ポイント

(1)自筆証書遺言に関する改正

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自筆証書遺言はその名の通り、すべて直筆で作成する遺言書のことを言いますが、今回の改正では、財産目録に関してはパソコン等を使用して作成しても良いという緩和要件が盛り込まれています。

また、自筆証書遺言の保管方法にかんしても、法務局で保管してもらうことが可能となり、法務局に預けた自筆証書遺言書は検認手続をせずに遺言執行が可能になります。

自筆証書遺言の場合、遺言が発見されないというリスクや、検認手続を行う必要があり遺言執行までに時間がかかるというデメリットがありましたが、法改正によって自筆証書遺言が利用しやすくなりそうです。

(2)遺留分基礎財産の期間制限

遺留分の基礎財産とは、遺留分を計算するときに基礎となる財産です。基礎財産は下記の算出式によって算出することができます。

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上記の贈与財産で、特別受益に該当する贈与に関しては期間制限が設けられていませんでしたが、法改正では「相続開始前10年間」という期間制限が設けられました。

(3)相続登記の義務化

相続によって取得した不動産の登記は必須ではありませんでしたが、今回の改正では法定相続分を超える分に関しては登記が義務化となるようです。

義務化されないとしても、不動産の登記は行っておいたほうが後々面倒なことにならないで済みます。不動産を相続した場合には登記もしっかりと行ないましょう。

まとめ

約40年ぶりとなる民法の改正では、配偶者保護の強化や、遺産分割に関する改正、事業承継の円滑化に繋がる遺留分の改正など多くの改正が盛り込まれています。いつから施行になるかなどははっきりとしていませんが、ここで紹介した内容以外にも相続に関する変更があると見られています。

いずれにせよ、遺されたご家族にとってトラブルにならず円満な相続に繋がる法改正になってほしいと思います。