相続放棄をしても遺族年金や未支給年金を受給できるの?

相続放棄をしても遺族年金や未支給年金を受給できるの?

相続財産には現金、預金、不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。

もし被相続人(亡くなった方)の相続財産が借金だけである場合、相続してしまうと借金を背負わければなりません。このような場合、通常は相続放棄することで対処します。

しかし相続放棄をすると被相続人が亡くなることで支給される遺族年金を受給できるのかという問題が発生します。被相続人が年金受給者である場合、未支給年金がある時も同様です。なぜなら遺族年金や未支給年金は被相続人が亡くなることで受給権が発生したり、本来は被相続人が受給すべきものであったりするので、相続財産ではないかと考えられるからです。

そこで遺族年金、未支給年金と相続放棄の関係について考察しながら、受給できるか否かを見ていくことにしましょう。


相続放棄をしても遺族年金や未支給年金を受給できるの?

1、遺族年金とは?

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遺族年金とは一家の大黒柱である公的年金の被保険者が亡くなった時、亡くなった人によって生計が維持されていた遺族に対して支給される年金のことです。遺族年金には遺族基礎年金、遺族厚生年金があります。

(1)遺族基礎年金

遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者など一定の者が亡くなった時に支給されるものです。被保険者が一定の保険料納付要件を備えていることが支給要件となります。受給できる権利を有しているのは、亡くなった者によって生計を維持されていた子供のいる配偶者又は子供です。

また遺族基礎年金の他に国民年金の第一号被保険者として25年以上保険料を納付した夫が何も年金をもらわなかった場合、妻に寡婦年金が支給されます。さらに国民年金の第一号被保険者として36カ月以上保険料を納付し、老齢基礎年金又は障害基礎年金をもらわずに亡くなった場合、死亡一時金を遺族が受給できます。

(2)遺族厚生年金

遺族厚生年金とは、厚生年金の被保険者など一定の者が亡くなった時に支給されます。被保険者は国民年金の遺族基礎年金と同じ保険料納付要件を備えていることが支給要件となっています。

この年金を受給できる者は遺族基礎年金より範囲が広いです。具体的には亡くなった者によって生計を維持されていた以下の遺族の中で、高順位の者が受給できます。

第一順位配偶者又は子、第二順位父母、第三順位孫、第四順位祖父母

遺族年金は受給権者の固有の権利として受給するもので相続によって受給するわけではありません。そのため相続放棄の手続きをして、最初から相続人ではなくなった場合でも、遺族年金を受給できるので心配する必要はないでしょう。

2、未支給年金とは?

年金受給者が亡くなった場合、年金受給権が消滅するので、死亡届を提出して年金の支給を停止させるのですが、その際に未支給年金の請求手続きを伴うことが少なくありません。未支給年金とは亡くなった年金受給者がまだ支給を受けていない年金のことです。なぜ未支給年金が発生するのかというと、年金支給は基本的に毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の偶数月に前月と前々月分が支給されるからです。例えば年金受給者が11月11日に亡くなった場合、10月に支給される8月分と9月分までは受給できます。しかし10月分と亡くなった11月分は12月に支給されるので、本人は受け取ることができません。このようにして未支給年金が発生するというわけです。

そこで未支給年金は誰が受給できるのかというと亡くなった年金受給者と生計を同じくしていた者で、以下の順位によって受給する人が決まります。

第一順位配偶者、第二順位子、第三順位父母、第四順位孫、第五順位祖父母、第六順位兄弟姉妹、第七順位第一順位~第六順位以外の三親等以内の親族

未支給年金は亡くなった年金受給者の有する権利を代わりに行使して受給するので、相続財産なのではとも考えられますが、年金法では相続とは関係なく、独自の立場で未支給年金の受給権者を定めています。最高裁の判例(最高裁H7・11・7判決)においても未支給年金は相続財産ではないとの見解が出ているところです。そのようなことから相続放棄の手続きをしても、それとは関係なく、未支給年金を受け取ることができるので安心ですね。

3、相続放棄が年金受給に与える影響

相続放棄とは被相続人の財産を一切承継しないことをいい、家庭裁判所に申述することによっておこないます。

この手続きをする期間も定められており、原則、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に手続きしなければなりません。相続放棄の手続きをすると、はじめから相続人ではなかったとみなされ、被相続人の相続財産を承継できなくなるのです。

しかし遺族年金や未支給年金は相続財産ではなく、それぞれ独自の権利を下に受給するものです。相続放棄によって相続財産を承継できなくなっても、これらの年金受給権に影響はないのです。

またこれとは逆に遺族年金や未支給年金を受給した場合、相続放棄をすることはできるのかという問題があります。

というのも民法921条1項には「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき」は相続を承認したものとみなすという規定があり、これに該当すると相続放棄ができなくなってしまうからです。

ただ前にも述べたとおり、遺族年金や未支給年金は相続財産ではなく、これらの年金を受給しても相続財産の全部または一部を処分したときに該当しません。そのため遺族年金や未支給年金を受給しても、相続放棄をすることは可能です。

まとめ

相続放棄した際に、年金が受給できるのかをご紹介していきました。

類似論点として、相続放棄をした場合、生命保険を受け取れるかどうかという記事を記載しましたので、ぜひ下記サイトもあわせてご確認ください。

相続放棄しても生命保険はもらえるって本当!?【図解で解説】

生命保険の死亡保険金を受け取ったあとに相続放棄はできますか?

合わせて相続放棄のポイントもご覧ください。

知らなきゃ大損に!?相続放棄7つのポイント

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