相続税の支払いは現金ではなく物納ですべき場合も存在する?

相続税の支払いは現金ではなく物納ですべき場合も存在する?

相続税は期限内に金銭で一括納付が基本となります。しかし、現金で一括納付することが困難な場合には、物で納める物納も認められております。物納があること自体知らない方も多いのではないでしょうか?今回は物納について簡単にご説明させて頂きます。


相続税の支払いは現金ではなく物納ですべき場合も存在する?

1.物納とは何か?

相続税は期限内に金銭で一括納付が原則です。しかし、現金で一括払いすることが難しい場合は、まずは、一定の条件を満たせば延納を認められております。

延納とは、相続税を分割して少しずつ支払う方法です。しかし、延納でも相続税を払うことができない場合には、物で納める物納が認められております。 

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延納については、相続税が一括で払えない!そんな時には延納申請を!をご覧ください。

2.物納せずに売却代金で納めたほうがお得?

物納する場合、その財産の相続税評価額分、納めるということになります。ここで注意しなければならないのが「時価=相続税評価額」ではないという点です。

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事例でご説明致します。

物納に供する土地の時価が1億円だったとします。

上記の土地の相続税評価額が5,000万円とします。

この場合、時価1億円の土地であっても物納すると、相続税評価額が5,000万円であるため、相続税の支払額は5,000万円となります。
 
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また、小規模宅地等の特例の適用を受けた相続財産を物納する場合の価額は、特例適用後の価額となります。
相続税の支払いは現金ではなく物納ですべき場合も存在する?

よって、1億円の土地であっても小規模宅地等の特例を利用した結果評価額が2,000万円になることがあります。この資産を物納した場合には、1億円の価値があるにもかかわらず2,000万円を納めたことになってしまいます。

小規模宅地等の特例の詳細については、

最大80%評価減を実現させる「小規模宅地等の特例」とは?をご覧ください。

場合によっては物納ではなく、一度売却して現金取得後に、相続税を支払ったほうがお得なケースもあります。(ただし、売却した場合は、譲渡所得税がかかる場合があります。)
物納すべきかどうかは売却した場合も含めて検討されることをおすすめします。
 
相続財産の売却を検討されるのであれば、下記サイトをぜひご参照ください。

3.物納の要件

次に掲げるすべての要件を満たしている場合に、物納の許可を受けることができます。 

(1) 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難としていること。

(2) 物納申請財産は、納付すべき相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、次に掲げる財産及び順位で、その所在が日本国内にあること。

第1順位 国債、地方債、不動産、船舶

第2順位 社債(特別の法律により法人の発行する債券を含みますが、短期社債等は除かれます。)、

       株式(特別の法律により法人の発行する出資証券を含みます。)、

                証券投資信託又は貸付信託の受益証券

第3順位 動産

*上記の財産の順位と種類に関しては、平成29年3月31日申請までとなります。平成29年年度税制改正により、4月1日以降の物納申請に関しては財産の順位と種類に変更があります。詳しくは「平成29年度税制改正により物納の要件が変わりました!変更点を解説します。」をご確認下さい。

(注)
  1. 後順位の財産は、税務署長が特別の事情があると認める場合及び先順位の財産に適当な価額のものがない場合に限って物納に充てることができます。
  2. 特定登録美術品(美術品の美術館における公開の促進に関する法律第2条第3号に規定する登録美術品で相続開始の時において既に登録を受けているものをいいます。)については、上記の順序にかかわらず一定の書類を提出することにより物納に充てることができます。

(3) 物納に充てることができる財産は、管理処分不適格財産に該当しないものであること及び物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと。

(4) 物納しようとする相続税の納期限又は納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること。

どの資産を物納することができるのかの判断は非常に難しいため、相続税専門の税理士とご相談のうえ物納の手続きを進めていくことをオススメします。 

4.物納申請書

https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/nofu-shomei/enno-butsuno/yoshiki/02.htm

上記サイトの051以降を参考に作成してください。 

約100ページもあるため、非常に大変なので、作業は税理士さんにお願いした方が良いかもしれません。 

5.利用しやすくなった物納制度

 従来は、10年以上も待たされるというケースがあるほど、物納の許可を得るには、時間がかかっておりました。その結果、多くの不満が出ており、近年の制度でその不満を解消するために改正されました。

 従来は、物納できるものとできないものの区別が不明確でしたが、改正によって明確になりました。

相続税の支払いは現金ではなく物納ですべき場合も存在する?

物納できない財産 ⇒ 物納不適格財産

物納適格財産がない場合に限り物納が認められる財産 ⇒ 物納劣後財産

6.物納不適格財産

 相続税の支払いは現金ではなく物納ですべき場合も存在する?

次に掲げるような財産は、物納に不適格な財産となります。下記の限定列挙(列挙されているものに限定)となります。

イ 不動産
(イ) 担保権が設定されていることその他これに準ずる事情がある不動産

(ロ) 権利の帰属について争いがある不動産

(ハ) 境界が明らかでない土地

(ニ) 隣接する不動産の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産

(ホ) 他の土地に囲まれて公道に通じない土地で民法第210条の規定による通行権の内容が明確でないもの

(ヘ) 借地権の目的となっている土地で、その借地権を有する者が不明であることその他これに類する事情があるもの

(ト) 他の不動産(他の不動産の上に存する権利を含みます。)と社会通念上一体として利用されている不動産若しくは利用されるべき不動産又は二以上の者の共有に属する不動産

(チ) 耐用年数(所得税法の規定に基づいて定められている耐用年数をいいます。)を経過している建物(通常の使用ができるものを除きます。)

(リ) 敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産

(ヌ) その管理又は処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産

(ル) 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産

(ヲ) 引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産

(ワ) 地上権、永小作権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定されている不動産で次に掲げる者がその権利を有しているもの

1 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)

2 暴力団員等によりその事業活動を支配されている者

3 法人で暴力団員等を役員等(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事及び監事並びにこれら以外の者で当該法人の経営に従事している者並びに支配人をいう。)とするもの

 
ロ 株式
(イ) 譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式で、その手続がとられていないもの

(ロ) 譲渡制限株式

(ハ) 質権その他の担保権の目的となっているもの

(ニ) 権利の帰属について争いがあるもの

(ホ) 共有に属するもの(共有者全員がその株式について物納の許可を申請する場合を除きます。)

(へ) 暴力団員等によりその事業活動を支配されている株式会社又は暴力団員等を役員(取締役、会計参与、監査役及び執行役をいう。)とする株式会社が発行した株式

 
ハ 上記以外の財産
その財産の性質が上記の財産に準ずるものとして税務署長が認めるもの

以上が物納不適格財産となります。

かなり複雑で難しい言葉で説明しておりますが、代表例は、『争訟事件となる可能性が高い財産』です。 

7.物納劣後財産とは?

相続税の支払いは現金ではなく物納ですべき場合も存在する?

次に掲げるような財産は、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り物納に充てることができます。

イ 地上権、永小作権若しくは耕作を目的とする賃借権、地役権又は入会権が設定されている土地

ロ 法令の規定に違反して建築された建物及びその敷地

ハ 土地区画整理法による土地区画整理事業等の施行に係る土地につき仮換地又は一時利用地の指定がされていない土地(その指定後において使用又は収益をすることができない土地を含みます。)

ニ 現に納税義務者の居住の用又は事業の用に供されている建物及びその敷地(納税義務者がその建物及び敷地について物納の許可を申請する場合を除きます。)

ホ 劇場、工場、浴場その他の維持又は管理に特殊技能を要する建物及びこれらの敷地

ヘ 建築基準法第43条第1項に規定する道路に2メートル以上接していない土地

ト 都市計画法の規定による都道府県知事の許可を受けなければならない開発行為をする場合において、その開発行為が開発許可の基準に適合しないときにおけるその開発行為に係る土地

チ 都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除きます。)

リ 農業振興地域の整備に関する法律の農業振興地域整備計画において農用地区域として定められた区域内の土地

ヌ 森林法の規定により保安林として指定された区域内の土地

ル 法令の規定により建物の建築をすることができない土地(建物の建築をすることができる面積が著しく狭くなる土地を含みます。)

ヲ 過去に生じた事件又は事故その他の事情により、正常な取引が行われないおそれがある不動産及びこれに隣接する不動産

ワ 事業の休止(一時的な休止を除きます。)をしている法人に係る株式

上記が物納劣後財産となります。

難しい言葉で説明させて頂きましたが、物納劣後財産の代表例は、『相続人が居住又は事業の用に供している家屋及び土地』です。

かなり細かく記載をしましたが、かなり複雑なため、何を物納できるかは税理士と相談して決めるのが良いでしょう。

まとめ

物納は近年、従来に比べて非常に利用しやすくなりました。
しかし、一般の方が一人で手続きを行うことは、難しいと思いますので、全ての手続きを税理士さんにお願いするのがよいのではないでしょう。
一番得をする物納が出来れば大きなメリットとなるでしょう。